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孔雀船(伊良子清白)のあらすじ・登場人物

埋もれていた明治浪漫詩の傑作

伊良子清白 1906年(明治39年)5月

文字数
9,072字
読了目安
約18分
表記
旧字旧仮名

この作品について

伊良子清白の唯一の詩集。1906年(明治39)5月刊。母にささげられた。「漂泊」「島」「花売」「人柱」「初陣」「使者」など、日本の古い物語や海への憧れを、古語を駆使した格調高い文語詩に仕立てる。刊行時は反響が少なかったが、のちに明治浪漫詩の傑作と再評価された。

あらすじ

巻頭には、故郷の山に眠る母にささげる言葉があり、岩波文庫版では「阿古屋の珠は年古りて其うるみいよいよ深く」と始まる序が付く。本文には「漂泊」「島」「花賣」「夕は」「古梯」「諸扉」「人柱」「炎に」「禁制」「初陣」「使者」などが並ぶ。巻末の一篇には、『飾馬考』『武器考證』『太平記』や近松の諸作に依ったという注があり、古い物語に取材した作が多いことがわかる。

冒頭部(原文より)

故郷の山に眠れる母の靈に 岩波文庫本のはしに  阿古屋の珠は年古りて其うるみいよいよ深くその色ますます美はしといへり。わがうた詞拙く節おどろおどろしく、十年經て光失せ、二十年すぎて香去り、今はたその姿大方散りぼひたり。昔上田秋成は年頃いたづきける書深き井の底に沈めてかへり見ず、われはそれだに得せず。ことし六十あまり二つの老を重ねて白髮かき垂り齒脱けおち見るかげなし。ただ若き日の思出のみぞ花やげる。あはれ、うつろなる此ふみ、いまの世に見給はん人ありやなしや。

「孔雀船」伊良子清白(青空文庫)

末尾部(原文より)

冬は折れ伏す蘆毛積る雪毛 數多き御馬のうちにも 言上いたして召され候はん 拜謁申して駿馬を奉らん この篇『飾馬考』『全書』『武器考證』『馬術全書』『鞍鐙之辯』『春日神馬繪圖及解』『太平記』及び巣林子の諸作に憑る所多し敢て出所を明にす

「孔雀船」伊良子清白(青空文庫)

名文

阿古屋の珠は年古りて其うるみいよいよ深くその色ますます美はしといへり。わがうた詞拙く節おどろおどろしく、十年經て光失せ、二十年すぎて香去り、今はたその姿大方散りぼひたり。昔上田秋成は年頃いたづきける書深き井の底に沈めてかへり見ず、われはそれだに得せず。ことし六十あまり二つの老を重ねて白髮かき垂り齒脱けおち見るかげなし。ただ若き日の思出のみぞ花やげる。あはれ、うつろなる此ふみ、いまの世に見給はん人ありやなしや。

伊良子清白が詩集『孔雀船』(1906年)を岩波文庫に収める際に添えた序。古い歌の光が失せた今、若い日の思い出だけが花やぐと、静かに綴る。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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