高浜虚子の名文

高浜虚子の作品から、よく知られた一節を集めました。

4件

六百句

大根を水くしや〳〵にして洗ふ

大根を洗う水の勢いを「くしやくしや」と言い表した句。何気ない日常の一場面を平明に写す、虚子の説いた「客観写生」の典型。

天地の間にほろと時雨かな

天と地のあいだに、ほろりと時雨が降る。広大な空間と「ほろ」というかすかな音とを対比させた、円熟期の虚子の大きな句境を示す一句。

生きてゐるしるしに新茶おくるとか

自殺した若柳敏三郎を悼んで詠まれた句。「生きているしるしに新茶を送る」という生前の便りの言葉を思い返すことで、さりげない心遣いが悲しみを深くする。

老犬の我を嗅ぎ去る枯木中

疎開先の小諸で詠んだ句。老いた犬がこちらを嗅いで去っていく冬枯れの林——老境の自分と犬とを淡々と重ねた、静かな寂しさの漂う一句。

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高浜虚子