秋の瞳(八木重吉)のあらすじ・登場人物
貧しい詩をあなたの胸へ捧げます
- 文字数
- 8,291字
- 読了目安
- 約17分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
八木重吉が生前に刊行した唯一の詩集。「私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません」という短い序に始まり、飾りをいっさい削ぎ落とした、祈りのように澄んだ詩が並ぶ。信仰と孤独、幼子への愛、そしてうつくしいものへの渇きが、ひらがなの多い平明なことばで書きとめられている。刊行の二年後、詩人は29歳で世を去った。
あらすじ
「私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください」——序はこの数行だけである。収められた詩も、多くが数行の短いものだ。「息を ころせ/いきを ころせ/あかんぼが 空を みる」(息を殺せ)。「白い 枝/ほそく 痛い 枝/わたしのこころに/白い えだ」(白い枝)。うつくしいものはどこにあるのかと問い(「うつくしいもの」)、故郷の山にうずくまって自らの悔いが燃えるのを見つめ(「ふるさとの山」)、幼子の背に垂らす赤い袋を見て秋を感じる。日常のごく小さな事物——植木屋の鋏の音、柳、山車、赤ん坊のふくろ——が、そのまま神への感謝や祈りに変わってゆく。「なくな 児よ/哭くな 児よ/この ちちをみよ/なきもせぬ/わらひも せぬ わ」。ことばはどこまでも少なく、そのぶん一語一語が澄んで響く。飾らないゆえに強い、日本近代詩のなかでも特異な位置を占める一冊である。
冒頭部(原文より)
序 私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。 息を 殺せ 息を ころせ いきを ころせ あかんぼが 空を みる ああ 空を みる
「秋の瞳」八木重吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
春 春は かるく たたずむ さくらの みだれさく しづけさの あたりに 十四の少女の ちさい おくれ毛の あたりに 秋よりは ひくい はなやかな そら ああ けふにして 春のかなしさを あざやかにみる
「秋の瞳」八木重吉(青空文庫)
名文
私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。
第一詩集『秋の瞳』の序。二十九歳で世を去った八木重吉の、孤独と信仰に根ざした素朴な詩の世界が、読者への短い呼びかけに凝縮されている。
原文を読む
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