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花守(横瀬夜雨)のあらすじ・登場人物

病床から咲いた哀歌

横瀬夜雨 1905年(明治38年)11月

文字数
18,930字
読了目安
約38分
表記
旧字旧仮名

この作品について

横瀬夜雨の最初の詩集。1905年(明治38)11月刊。脊髄の病で身体が不自由だった夜雨が、母の愛や自分の不遇、恋をうたった。序文には、『神も佛も』という長篇を読んで初めて夜雨の詩を知ったという友人の言葉が記される。

あらすじ

序は、友人が七八年前に雑誌で『神も佛も』という長篇詩を読んで夜雨を知ったと書き、これほど文字によって哀苦を訴えられたことはなかったと述べる。夜雨は生まれつき弱く、脊髄に不治の病を得て、幸福や快楽からほど遠いが、慈母の愛撫を受け、家庭の平穏は世に稀なほどだと語る。収録詩の終わりに近い一篇は、いとしい子を失うかもしれない母の悲しみと、その母を残して去れない思いを、素朴な口調でうたう。

冒頭部(原文より)

 我が夜雨の詩を讀みたるは、七八年前某雜誌に載せられたる『神も佛も』といふ一長篇を以て初めとなす、當時彼の年齒猶少、その詩想、亦今より見れば穉簡を免れざる如しと雖も、我は未だ曾てかくばかり文字によりて哀苦を愬へられたることあらず、我が彼と交を訂したるは、爾後兩三年の間にあり、彼生れて羸弱、脊髓に不治の病を獲て、人生の所謂幸福、快樂なるもの、幾んど彼が身邊より遠ざかる、彼に慈母ありて愛撫※さに至り、家庭の清寧平温は、世稀に見るところにして、尠くとも彼自身はかれの如く悲觀す、彼もし哲人ならば、形骸を土芥視して、冷やかに人間と世間と、一切を嗤笑して止みしならむ、彼もし庸人ならば、無氣淪落その存在を疑はれて止みしならむ、然れども彼は情の人なり、眞の人なり、脆弱なる地皮より熱漿を吐く如く、彼が孱躯は肉を蠢にし、詩を靈にしたり、彼が詩は、實に悒然樂しまざるあまりに吐かれたる咳唾なり、尋常人に無意味なる落葉一片も、彼は清唳なくして之を看過する能はず、人生は彼に在りて憂が描ける單圈のみ、愁苦を以て結し、詩を以て分解す、彼が從來の半生涯傳は是也、故に彼の詩の半面は險、澁、幽、暗にして、他の半面は眞、率、慘、澹、之を貫ぬくに脈々たる生血を以てす、詩豈活きざらんや。

「花守」横瀬夜雨(青空文庫)

末尾部(原文より)

かくれんとするいとし兒を 悲む母のふところに 退かせじとする枷にして 千代もとわれは祈れども 母は子故に死なんといふ 世に一人なる母をおきて わが有つものは   有らじと思ふに

「花守」横瀬夜雨(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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