自警録(新渡戸稲造)のあらすじ・登場人物
日々の心の持ち方を説く
- 文字数
- 168,468字
- 読了目安
- 約5時間37分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
新渡戸稲造が1916年(大正5年)に刊行した修養書。序文は同年5月、南洋旅行の途上の船中で書かれている。道徳は高遠な学問ではなく、毎日の言行に現れてこそ意味があるという考えから、「男一匹」「一人前の人と一人前の仕事」「強き人」「外は柔、内は剛」「怖気の矯正」「譏謗に対する態度」など二十七章にわたって、ふだんの心の持ち方を平易な口語で説く。孔子や孟子、聖書、ミルトンやルターなどの言葉に、ことわざや狂歌、初めて英語で演説したときに震えが止まらなかったといった自身の体験談を交えて語っている。
あらすじ
序で新渡戸は、道徳や仁義は高尚遠大なものと思われがちだが、その効用は日々の言行に現れるところにあり、数千年来の人々が踏み固めた平らな道なのだと述べる。第一章「男一匹」では、神と獣の間に立つ人間として、勇気と推理の力、判断の力、弱者を保護する心を備えることを説き、「男は強かるべし強がるべからず」と戒める。第二章では「一人前」とは何を標準にした言葉かを問い、職業上の一人前と全人としての一人前とを区別する。続く章では、外に強い人より内に強い人、よく耐える人こそ強いこと、外は柔らかく内は剛くあるべきこと、気弱や怖気の原因とその直し方を、初めての英語演説で震えた自分の体験を交えて語る。悪口や世評に対する態度、心と体の独立、人生の成敗と決勝点、報酬以上の務めを果たすこと、富や実業を精神化すること、知らない恩人への感謝、言葉の心、忠告の取捨、感情による職業選択、若返りの工夫、全力と余裕、理想と実現と、話題は暮らしと仕事の全般に及ぶ。最終章「夢の実用」では、夢をも修養の資とする工夫を説き、王陽明の詩を引いて筆をおく。
冒頭部(原文より)
序 とかく道徳とか仁義とかいえば、高尚遠大にして、通常人の及ばざるところ、たまたま及ぶことあれば、生涯に一度か二度あって、専門的に修むる者にあらざれば、単に茶話の料か、講義の題として聞くもののごとく思い流すの懼がある。
「自警録」新渡戸稲造(青空文庫)
末尾部(原文より)
世の中は夢か現か現とも夢とも知らずありてなければ などいう一首の意味も、吾人の立場の高低によってどうとも取れる。なおさら修養が積んだならもう一段昇りて王陽明とともにかく吟ずるの日も来たらん。 人間白日醒猶睡 人間は白日に醒むるも猶睡るがごとく 老子山中睡却醒 老子は山中に睡るも却って醒めたり 醒睡両非還両是 醒睡両つながら非 還両つながら是 溪雲漠漠水冷冷 溪雲漠漠たり 水冷冷たり
「自警録」新渡戸稲造(青空文庫)
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