猫料理(村松梢風)のあらすじ・登場人物
モナコの王様くらいの猫
- 文字数
- 2,035字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 神奈川県
この作品について
鎌倉の家に猫が十匹。魚屋が朝夕に運ぶ小アジ、キス、ヒラメ、マグロのさし身、ときにはビフテキとレバー——愛猫家として知られた村松梢風が、その桁外れの猫の食生活を書きとめた随筆。飼い主の自慢とも自嘲ともつかぬ筆致で綴られ、最後は「日本人はよくよくの猫族である。しかもその味覚は私の家の猫にはとうてい及ばない」という一文で締めくくられる。
あらすじ
私の家には現在猫が十匹いる。七年ほど前に一匹のメス猫が舞い込んでお産をしたのが始まりだった。子猫は棄ててもらったが、お産をしたばかりの親猫を追い出すのもかわいそうだと牛乳や魚をやっているうちに居すわってしまったのである。この地方で金沢猫とも呼ぶ一種のキジ猫で、素晴らしいグラマーだったその母猫は、去勢手術の失敗で腹を割かれたまま死んだ。息を引き取る寸前、椅子にかけていた私の膝の上へピョンと飛び上がってそのまま死んでしまった。私が泣いたのは長男が死んだ時と、昔愛人が死んだ時と、この猫が死んだ時の三回だけである。……残された子猫たちを飼い出し、よそから舞い込んだ二匹を加えて現在十匹になった。食べ物は最初から飯をやらず魚だけで育てた。鎌倉名物の小アジのナマと塩なしの干物が主食で、キス、ヒラメ、カツオ、ナマリ節、マグロのさし身、卵の黄身に牛乳、時にはビフテキやレバーもやる。さし身しか食べない奴、小アジしか食べない奴。習慣性が強く、東京湾でとれたものは決して食べず、鮮度が落ちれば匂いをかいだだけでプイと向うへ行ってしまう。家じゅうに猫の椅子とヤグラと籠があり、紫チリメンやドンスの大座布団が据えてある。砂は月に一度大トラックで海浜から運び、横浜の獣医が十日おきに全員の健康診断に来る。「モナコの王様くらいの生活振りだ」と梢風は書く。
冒頭部(原文より)
私の家には現在猫が十匹いる。どうしてそんなに猫がふえたのかというと、今から七年ほど前に一匹のメス猫が私の家へ舞い込んでお産をした。それを発見してあわてて魚屋の若い衆を頼んで子猫を海に棄ててもらった。
「猫料理」村松梢風(青空文庫)
末尾部(原文より)
こういうわけで、私の家ではあらゆる魚は猫の食物である。しかも有名な小坪の漁場でとれたものばかりだから、東京の天ぷら屋のタネなど生臭くて私には食べられない。(中略)日本人はよくよくの猫族である。しかもその味覚は私の家の猫にはとうてい及ばない。
「猫料理」村松梢風(青空文庫)
原文を読む
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