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探偵小説このごろ(野村胡堂)のあらすじ・登場人物

平次は何年経っても三十

野村胡堂 1950年(昭和25年)4月 「毎日グラフ」

文字数
4,739字
読了目安
約9分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

「銭形平次捕物控」の野村胡堂と江戸川乱歩の対談。捕物帖を三百篇以上書いたという多作ぶりから話は始まり、トリックの尽きない秘訣、大衆小説風からコナン・ドイル風へ、さらに心理的な描写へと変わってきた作風、そして「銭形平次は何年経っても三十だ」という一言まで。二人の巨匠が互いの仕事を率直に語り合った、当時の探偵小説界を伝える貴重な記録。随筆集『随筆銭形平次』所収。

あらすじ

ずいぶん書いたね、捕物帖は何篇くらいになった——乱歩の問いに、胡堂は、はっきりしたことはわからないが三百篇は越しているだろうと答える。「銭形平次」と「池田大助捕物控」の両方で、銭形のほうは二百四、五十篇というところか。「オール読物」の創刊号から毎号一篇ずつ載せはじめて、五年目に半年ほど休んだら読者が承知せず、販売店がうるさく言ってくるので、また載せはじめたのだという。こんなに多くの短篇を書いた人は外国にも例がなく、コナン・ドイルで六十篇、チェスタートンでも八十篇だと乱歩は言う。……話題はトリックへ移る。三百篇のうち同じトリックを使ったものはないのかと問われ、胡堂は、つい忘れて似たようなものを使うことはあっても全然同じということはない、と答える。作風については、むかしは大衆小説風にチャンバラ式に書き、それからだんだんコナン・ドイル風になり、近ごろは心理的に、性格描写にも力を入れようという気持になってきたが、三十枚そこそこの長さではとても書けない、と。原稿用紙三十枚では探偵小説的面白さは出せない、ドイル時代はだいたい百枚だった、と乱歩も応じる。終わりに近づくと、二人は互いの主人公を語る。おたがい年をとっていくが作品の主人公はいつまでも若い——銭形平次は何年経っても三十だ、年をとらせると失敗する、と胡堂は笑う。乱歩は自作短篇の英訳を自費出版するつもりだと明かし、胡堂は自分の捕物帖を訳そうとしたアメリカ人が、「親分」という言葉が英語にならないと言ってきた話で結ぶ。

登場人物

冒頭部(原文より)

「銭形平次」で世界的多作家に  江戸川乱歩 ずいぶん書いたね。「捕物帖」は……何篇くらいになった?  野村胡堂 ハッキリしたことはわからないが、三百篇は越しているだろう。もっともわたしの捕物帖は、「銭形平次」と「池田大助捕物控」と両方だからね。

「探偵小説このごろ」野村胡堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 江戸川 ぼくは自分の短篇の英訳を自費出版しょうと思ってね。「心理試験」「人間椅子」「双生児」といったものをハリスという人が訳してくれた。間もなく出せると思う。  野村 いつかわたしの捕物帖を訳すんだといってアメリカ人が持っていったが、とてもダメです、といってきた。英語にならんらしい。だいいち親分という言葉がない。ボスでは困るし……。ハッハッハ。

「探偵小説このごろ」野村胡堂(青空文庫)

原文を読む

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