雪(中谷宇吉郎)のあらすじ・登場人物
雪は天から送られた手紙
- 文字数
- 76,497字
- 読了目安
- 約2時間33分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
雪の結晶の研究と世界初の人工雪の製作で知られる物理学者・中谷宇吉郎が、1938年(昭和13年)に一般向けに著した科学随筆。鈴木牧之『北越雪譜』を手がかりに雪国の暮らしと雪害を語る「雪と人生」、江戸の『雪華図説』などを紹介する「『雪の結晶』雑話」、北海道で行った結晶の観測と分類を報告する「北海道における雪の研究の話」、実験室で雪を作るまでを描く「雪を作る話」の四話から成る。専門家ではなく自然現象に関心を持つ人のために書いたと序で述べ、雪は天から送られた手紙であるという一節もここに見える。
あらすじ
第一話「雪と人生」は、越後塩沢の鈴木牧之が書いた『北越雪譜』を入口に、暖国の人には想像もつかない雪国の生活を紹介し、著者が山形県新庄の積雪地方農村経済調査所で見聞した雪害の実情から、雪と人の暮らしの深い関わりを語る。第二話「『雪の結晶』雑話」では、雪が水蒸気から直接できる氷の結晶であることを説き起こし、江戸時代に土井利位がまとめた『雪華図説』やベントレーの写真集など、結晶を観察してきた人々の歴史をたどる。第三話「北海道における雪の研究の話」では、十勝岳の山小屋などで顕微鏡写真を撮り続けた観測の経過を報告し、針状・角柱・樹枝状・角板など多様な結晶を分類して、それが降るときの気象条件と結びつくことを示す。第四話「雪を作る話」では、低温実験室のなかで兎の毛の先に氷の結晶を育て、温度と水蒸気の量を変えることで天然と同じ形の結晶を人工的に作り出すまでの苦心を描き、結晶の形から上空の気象を読み取れることを、雪は天から送られた手紙であると言い表す。巻末には、戦後のアメリカでの人工降雪の研究にふれた追記が添えられている。
冒頭部(原文より)
この本は雪の結晶について私が北海道で行った研究の経過及びその結果をなるべく分りやすく書いたものである。勿論専門の学者の人に読んでもらうつもりは毛頭ないので、ただ自然の色々な現象について正当な理解を持ちたいと思っておられる人々に、少しでも自然現象に対する興味を喚起する機縁になれば有難いと思って書いたものである。
「雪」中谷宇吉郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
理論は略するが、これで氷晶の成因は一応分った。このアメリカでの近年の研究と、私たちの実験とを併せると、雪の結晶の人工製作の問題が、初めて首尾一貫して解けたことになる。もちろん、この「併せると」という言葉が曲者で、まだ追究しなければならない点は、たくさんある。 しかしこのGEの研究が出たので、私たちの人工雪の研究も、その性格が非常にはっきりして来たわけである。
「雪」中谷宇吉郎(青空文庫)
名文
このように見れば雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである。
中谷宇吉郎の名高い一節。雪の結晶の形から上空の気象を読みとく研究を、「天から送られた手紙」を解読する営みにたとえる。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。