ユゴーの名文
ユゴーの作品から、よく知られた一節を集めました。
11件
レ・ミゼラブル
ジャン・ヴァルジャンさん、あなたはもう悪のものではない、善のものです。私が購うのはあなたの魂です。私はあなたの魂を暗黒な思想や破滅の精神から引き出して、そしてそれを神にささげます。
銀の食器を盗んだジャン・ヴァルジャンを許し、燭台まで持たせたミリエル司教の言葉。この赦しが元徒刑囚の生涯を変える出発点になる。
愛しもしくは愛した、それで充分である。更に求むることをやめよ。人生の暗い襞のうちに見いだされ得る真珠は、ただそれのみである。愛することは成就することである。
第五部、若い二人の婚礼の夜に寄せて語り手が愛をたたえる一節。苦難の大河小説が最後に掲げる、愛こそ人生の真珠だという信条。
ワーテルローの戦いに勝利を得た者は、敗北したナポレオンでもなく、四時に退却し五時に絶望に陥ったウェリントンでもなく、自ら戦闘に加わらなかったブリューヘルでもない。ワーテルローの戦いに勝利を得た者は、彼カンブロンヌである。
降伏勧告に一語で応じた近衛隊の将カンブロンヌを、ユゴーがたたえる一節。第二部冒頭のワーテルロー論の白眉だ。
パリーは一つの子供を持ち、森は一つの小鳥を持っている。その小鳥を雀と言い、その子供を浮浪少年と言う。
第三部の書き出し。パリの浮浪児を雀にたとえて紹介する一文で、のちのガヴローシュの登場へつながる。
宇宙をただひとりに縮め、ただひとりを神にまでひろげること、それがすなわち愛である。
マリユスが石の下に残した手帳の第一行。コゼットが読む恋の断章の冒頭で、愛についての名句としてよく引かれる。
人の心眼は人間のうちにおいて最も多く光輝と暗黒とを見いだす。またこれ以上恐るべき、複雑な、神秘な、無限なものは、何も見ることができない。海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である。
章「脳裏の暴風雨」の冒頭近く。良心の葛藤に入っていく主人公を前に、ユーゴーが人の魂の深さを海と空にたとえて語る名高い一節。
彼女はその薔薇色のきれいな着物やそのなめらかな美しい髪毛をながめた、そして考えた、「あの人形はどんなにか仕合わせだろう!」
水くみに出た幼いコゼットが、玩具屋の大きな人形を見つめる。虐げられた少女の憧れが胸に迫る場面だ。
そこには何物もなかった、またすべてがあった。それは不思議な閃光であった。
リュクサンブール公園で、マリユスとコゼットの視線が初めて出会った瞬間。一目の恋の始まりをユゴーはこう書きとめる。
そして、ねえ、マリユスさん、あたしいくらかあなたを慕ってたように思うの。
バリケードで撃たれたエポニーヌが、マリユスの膝の上で最期に打ち明ける思い。報われない恋の終わりを告げる一言だ。
死刑囚最後の日
もう五週間のあいだ、私はその考えと一緒に住み、いつもそれと二人きりでおり、いつもその面前に凍えあがり、いつもその重みの下に背を屈めている。
「死刑囚!」の叫びに続く書き出し。死刑判決を受けた男が獄中で書く手記の形で、死を宣告された意識の重さが語られる。
私は何かの書物の中で読んだのであるが、ためになることはただそれだけだったのを覚えている。すなわち、人はみな不定期の猶予つきで死刑に処せられている。
死刑囚が自分の境遇を一般の人間と比べて考える一節。人はみな死を待つ身だという言葉を引きつつ、なお消えない差を見つめる。