伊藤左千夫の名文
伊藤左千夫の作品から、よく知られた一節を集めました。
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野菊の墓
「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」
野で花を摘む場面、政夫が民子に告げる一言。淡い恋心を野の花にたとえたこの言葉が作品の代名詞となり、以来「野菊のような人」は清らかな娘をさす比喩として広く使われるようになった。
民子は余儀なき結婚をして遂に世を去り、僕は余儀なき結婚をして長らえている。民子は僕の写真と僕の手紙とを胸を離さずに持って居よう。幽明遙けく隔つとも僕の心は一日も民子の上を去らぬ。
物語の結び。心ならずも別々の相手と結婚し、民子は世を去り「僕」だけが生き長らえた。十年余りを経て回想する「僕」の変わらぬ思いを、簡潔な対句で閉じる。