上田敏の名文

上田敏の作品から、よく知られた一節を集めました。

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海潮音

山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。 噫、われひとゝ尋めゆきて、 涙さしぐみ、かへりきぬ。

カアル・ブッセの詩を訳した「山のあなた」。原詩を離れて愛唱され、翻訳詩が日本語の名文になりうることを示した上田敏の代表訳。

秋の日の ヴィオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し。

ヴェルレエヌ「落葉」の訳。三音・四音で刻む短い行の連なりが原詩の韻律を日本語へ移し替え、翻訳詩の金字塔となった。

時は春、 日は朝、 朝は七時、 片岡に露みちて、 揚雲雀なのりいで、 蝸牛枝に這ひ、 神、そらに知ろしめす。 すべて世は事も無し。

ロバート・ブラウニングの詩「春の朝」の訳。春の朝の情景を短く刻んで重ね、「すべて世は事も無し」と結ぶ訳文は、原詩を離れて日本語の名句として親しまれている。

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上田敏