山川方夫の名文
山川方夫の作品から、よく知られた一節を集めました。
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夏の葬列
海岸の小さな町の駅に下りて、彼は、しばらくはものめずらしげにあたりを眺めていた。
山川方夫『夏の葬列』の書き出し。疎開児童として過ごした町を、大人になった「彼」が久しぶりに訪れるところから物語が始まる。
真夏の太陽がじかに首すじに照りつけ、眩暈に似たものをおぼえながら、彼は、ふと、自分には夏以外の季節がなかったような気がしていた。
芋畑の向こうに葬列を見た「彼」の感慨。過去の記憶にとらわれ、夏から抜け出せない心を短い一文が言い当てている。
もはや逃げ場所はないのだという意識が、彼の足どりをひどく確実なものにしていた。
かつて疎開した海辺の町を訪れた「彼」の姿で終わる結びの一文。少年の日の記憶から、もう逃れられないことを悟る。