詩集夏花(伊東静雄)のあらすじ・登場人物
夏の自然を見つめる第二詩集
- 文字数
- 4,757字
- 読了目安
- 約10分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
1940年(昭和15年)3月、子文書房から刊行された伊東静雄の第2詩集。第1詩集『わがひとに与ふる哀歌』の緊張した抒情から、自然と日常を見る目の確かさへ向かった。第5回北村透谷記念文学賞を受けた。冒頭に森亮訳「ルバイヤット」の一節をかかげる。
あらすじ
目次の最初に置かれた「燕」は、門の外の光まぶしい高みで、一羽の燕が単調に、鋭く、翳なく鳴く様子を歌う。続いて「砂の花」「夢からさめて」「蜻蛉」「夕の海」「いかなれば」「決心」「朝顔」「八月の石にすがりて」「水中花」「自然に、充分自然に」「夜の葦」「燈台の光を見つつ」「野分に寄す」「若死」「沫雪」「笑む稚児よ……」「早春」「孔雀の悲しみ」「夏の嘆き」「疾駆」と、自然物と心象を重ねる詩が並ぶ。巻末近くの「四月の晨」は、四月の朝、農家の厩から曳き出された三歳駒が、鞍を置かぬ背で目の前を駆け去り、遠い嘶きがふた声み声聞こえたのを、見送った様子を歌う。
冒頭部(原文より)
目次 燕 砂の花 夢からさめて 蜻蛉 夕の海 いかなれば 決心
「詩集夏花」伊東静雄(青空文庫)
末尾部(原文より)
脾腹光りて つと駆去りぬ 遠嘶の ふた声みこゑ まだ伸びきらぬ 穂麦の末に われ見送りぬ 四月の晨
「詩集夏花」伊東静雄(青空文庫)
名文
遂ひ逢はざりし人の面影 一茎の葵の花の前に立て。 堪へがたければわれ空に投げうつ水中花。 金魚の影もそこに閃きつ。 すべてのものは吾にむかひて 死ねといふ、 わが水無月のなどかくはうつくしき。
伊東静雄『夏花』(1940年)の「水中花」の後半。夜店の水中花を空に投げうつ身ぶりに、逢えなかった人への思いを託す。すべてが死ねと言うほど美しい六月という結びは、昭和の抒情詩のなかでもよく知られた一行である。
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