わがひとに与ふる哀歌(伊東静雄)のあらすじ・登場人物
朔太郎が見いだした孤独の抒情
- 文字数
- 6,401字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
1935年(昭和10年)10月、杉田屋印刷所から刊行された伊東静雄の第1詩集。萩原朔太郎が「日本にまだ一人、詩人が残つてゐた」と絶賛した。古い文語と近代の抽象的な語彙を重ね、孤独と愛の不可能を歌う独特の詩風で、伊東の名を詩壇に知らしめた。『コギト』『日本浪曼派』の詩人として知られる彼の代表作である。
あらすじ
目次には「晴れた日に」「曠野の歌」「私は強ひられる――」「氷れる谷間」「新世界のキィノー」「帰郷者」「冷めたい場所で」「海水浴」「わがひとに与ふる哀歌」「静かなクセニエ」など、詩の題が二十数篇並ぶ。巻頭の「晴れた日に」は、老いた母が強いられて故郷へ帰って行ったと、遠い「放浪する半身」へ告げる詩で、誰もが願うところに住めるわけではないという諦念が語られる。ほかに、有明海の思い出を歌う作、病院の患者の歌、河辺の歌、「漂泊」「鶯」などがある。巻末の「鶯」は、「私の魂」が記憶する、誰も信じない一篇の詩を、君の老年のために書きとめたと歌う。巻頭に「古き師と少なき友に献ず」とある。
冒頭部(原文より)
目次 晴れた日に 曠野の歌 私は強ひられる―― 氷れる谷間 新世界のキィノー 田舎道にて 真昼の休息
「わがひとに与ふる哀歌」伊東静雄(青空文庫)
末尾部(原文より)
そして私さへ信じない一篇の詩が 私の唇にのぼつて来る 私はそれを君の老年のために 書きとめた (読人不知) 水の上の影を食べ 花の匂ひにうつりながら コンサートにきりがない
「わがひとに与ふる哀歌」伊東静雄(青空文庫)
名文
太陽は美しく輝き あるひは 太陽の美しく輝くことを希ひ 手をかたくくみあはせ しづかに私たちは歩いて行つた かく誘ふものの何であらうとも 私たちの内の 誘はるる清らかさを私は信ずる
伊東静雄の第一詩集の表題作の冒頭。澄んだ光の中を歩む二人を描き、「誘はるる清らかさ」への信を語る、日本浪曼派を代表する抒情詩。
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