麻雀を語る(南部修太郎)のあらすじ・登場人物
チャラチャラチャラ、上海の夜の音
- 文字数
- 7,266字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
上海の茶館で聞いた「チャラチャラ」という牌の音から始まり、日本の文壇に麻雀が広まってゆくさまを綴った南部修太郎の随筆。菊池寛、佐佐木茂索、廣津和郎、古川緑波——実名で段位まで付けて並べられる顔ぶれが、昭和初期の文士たちの遊びぶりを生き生きと伝える。
あらすじ
大正十一年の秋、三か月の南北支那の旅を終えて明日は帰国という夜、南部は上海の町をさまよっていた。四馬路の菜館で広東料理に舌鼓を打ち、外国人のバーでリキュールをすすり、日本料理屋で芸者の長崎弁を聞き、フランス租界の秘密な阿片窟で阿片まで吸った。深夜一時過ぎ、ふらりと入った裏通りの茶館で窓を開けると、一間ばかりの路地を隔てた隣家の二階から、チャラチャラチャラチャラという聞き馴れない物音が聞こえてきた——それが麻雀との出会いである。以後、南部は日本に持ち帰ったこの遊戯にのめりこんでゆく。大正十四年の秋から誰に教わるともなく覚え、去年あたりはちょっとした熱病期だったと自嘲する。牌の魅力、運と技法の関係、衰運に沈むときの嫌気とすぐにまたむずむずしてくる中毒ぶり。そして相手方の顔ぶれが実名で並べられる。六段佐佐木茂索、三段和木清三郎、三段池谷信三郎、時に六段菊池寛、五段廣津和郎、七段川崎備寛、六段濱尾四郎、四段古川緑波、五段菅忠雄——名人試合のようだが、実際は手に汗を握る乱牌もあれば思わず頤を解くような沖和もある、と書く。腕よりも口の達者な面々が多いので、その騒々しさも察してほしい、と。諸賢の麻雀ぶりも紹介するつもりだったが、枚数も尽きたしあとの祟りも恐ろしいので——と結ばれる。
冒頭部(原文より)
話はだいぶ古めくが、大正十一年の秋の或る一夜のことだ。三ヶ月ほどの南北支那の旅を終つて、明日はいよいよ懷しい故國への船路に就かうといふ前の晩、それは乳色の夜靄が町の燈灯をほのぼのとさせるばかりに立ち罩めた如何にも異郷の秋らしい晩だつたが、僕は消息通の一友と連れ立つて上海の町をさまよひ歩いた。
「麻雀を語る」南部修太郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
相手方も勿論仲間内に多く、始終顏を合せるのが六段佐佐木茂索、三段和木清三郎、三段池谷信三郎などで、時に六段菊池寛、五段廣津和郎、七段川崎備寛、六段濱尾四郎、四段古川緑波、五段菅忠雄などといふ所……たとへばと諸賢のの麻雀振も紹介する積りだつたが、ちやうど許された枚數にも達したし、あとの祟りも恐ろしいので。
「麻雀を語る」南部修太郎(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。