民芸とは何か(柳宗悦)のあらすじ・登場人物
用の美を説く民芸の入門
- 文字数
- 32,060字
- 読了目安
- 約1時間4分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
民芸運動を起こした柳宗悦が、「民藝」という言葉とその考え方を一般の読者に向けて説いた論考。「なぜ民藝に心を惹かれているか」「民藝から何を私が学び得たか」の二篇に分かれ、民衆が日々用いる実用の工芸品こそ「工藝中の工藝」であるという主張を、字義の説明から順を追って展開する。誰が民芸の美を最初に認めたか、安い品がなぜ美しくなるのか、正しい民芸はどんな社会から生まれたのかといった問いを、「です・ます」の平易な語り口で一つずつ解いていく。
あらすじ
第一篇はまず「民藝」の字義から説き起こし、それが民衆の日々の暮らしで用いられる実用的な工芸品、俗に「下手物」と呼ばれた品々を指すことを明らかにする。著者は、美の問題からも経済の問題からも、これほど根本的な工芸の問題はないのに、いまだ真理の問題として扱われてこなかったと述べ、民芸の美を最初に見出したのが茶人たちであったことにふれつつ、私たちはその美に盲目であってはならないと説く。第二篇では、民芸の美が無名の職人の手から生まれること、作為や個人の名を求めない仕事の素直さ、量産と廉価のなかでかえって鍛えられる技が、品物に健全な美を与えると論じる。最後に、そうした品物を生んだのは、人と人とが互いに敬い協力し合う「協団」の社会であったと述べ、茶道が美の宗教であったように、これからは協団の美を大衆のなかに打ち立てねばならないと結ぶ。
冒頭部(原文より)
工藝の諸問題のうちで、過去に対しても将来に向っても、一番意味深い対象となるのは民藝の問題なのです。美の問題からしても経済の問題からしても、これ以上に根本的な工藝問題はないのです。
「民芸とは何か」柳宗悦(青空文庫)
末尾部(原文より)
かつて茶人達は鋭くも民藝品の美を見ぬきました。そうしてその質素な美の中に禅三昧を観じたのです。私達もまた美への鑑賞をそこまで高めねばなりません。ですがもう一歩彼等の触れ得なかった世界に入らねばならないのです。彼等は美の背後にいかなる組織の美があったかを見ないで終ったのです。ですが私達は工藝品の美が協団の美であることを見ているのです。美しいものには組織の美があるのです。協団こそは将来の人類の理念なのです。茶道が美の宗教であったように、私達には協団の宗教が悟得されねばならないのです。私達は協団によって義とせらるる美の世界を、大衆の中に樹立せねばならないのです。協団なくして工藝の美は不可能なのです。協団は救いなのです。民藝品は私にかく教えています。私はそこに新しい工藝の宗教を切に感じるのです。
「民芸とは何か」柳宗悦(青空文庫)
名文
工藝が実用を生命とする限り、民藝をこそ工藝中の工藝と呼ばねばなりません。
『民藝とは何か』の第一篇冒頭。実用を生命とする工藝にとって、民藝こそが工藝中の工藝だと論じる、柳宗悦の民藝論の出発点。
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