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桜さく島(竹久夢二)のあらすじ・登場人物

少年の夢は白い路をはてしもなく

竹久夢二 1912年(大正元年)4月

文字数
3,430字
読了目安
約7分
表記
新字旧仮名

この作品について

「夢二式美人」で知られる画家・竹久夢二の詩文集。副題は「見知らぬ世界」。おぶわれた女の肩ごしに見た花模様、芝居小屋で目にした「死の最初の発見」、少年の初な恋——夢二が自身の幼年から少年期を、絵を描くような筆致で書きとめた散文詩の連作である。

あらすじ

「青い野原のなかを、白い路がながく/\つヾいた」——巻頭の「路」は、母とも姉とも乳母ともわからない女におぶわれ、その女が泣くのにさそわれてわけもわからず泣いていた記憶から始まる。女の肩に頬をよせると、着物の花模様が涙のなかで咲いたり蕾んだりし、落ちた黄楊の櫛かと思えばそれは三日月だった——現実と幻の境が溶けた、夢二らしい絵のような一篇である。続く「死」では、芝居小屋の花道で百日鬘の山賊に斬られる姫君を見た少年が、「死の最初の発見」に打ちのめされる。血汐のしたたる生首を提げた山賊の笑い声、涙にとける死顔。あれは芝居というものだと母が涙を拭いてくれても、舞台の上で姫君が斬られたことは忘れられない記憶となった。以下、祭りの日の情景、旅の記憶、絵草紙屋、初な恋心が、いずれも短い散文詩として連ねられる。終盤では、炬燵で琴歌に声を合わせる年上の女・美迦野さんに、赤くなった手を熱い唇で吸われ、おどおどしながらも女のするがままにまかせている少年の姿が描かれる。少年は女の顔を見あげるのさえ恥ずかしかった——そう結ばれて、この「見知らぬ世界」は閉じられる。

冒頭部(原文より)

路 青い野原のなかを、白い路がながく/\つヾいた。 母とも姉とも乳母とも、いまはおぼえもない。 おぶさつたその女が泣くので、私もさそはれてわけはしらずに、ほろ/\泣いてゐた。 女の肩に頬をよせると、キモノの花模様が涙のなかに咲いたり蕾んだりした、白い花片が芝居の雪のやうに青い空へちら/\と光つては消えしました。

「桜さく島」竹久夢二(青空文庫)

末尾部(原文より)

そう言つて美迦野さんは、あまへたやうにしんなりとしなだれかヽつて 「まあおかあいそうに」 と言つて、赤くなつた私の手を熱い唇でひつたりと吸ひました。布団を眼深かにかぶつた小鳩のやうに臆病な少年はおど/\しながらも、女のするがまヽにまかせてゐた。 少年は女の顔をみあげるのさえはづかしかつた。

「桜さく島」竹久夢二(青空文庫)

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