ディケンズの名文
ディケンズの作品から、よく知られた一節を集めました。
3件
信号手
わかりません。私はまだその顔を見たことはないのです、左の腕を顔にあてて、右の手を振って……激しく振って……。こんなふうに……
信号手が、トンネルの入口に現れる怪しい人影の様子を語る言葉。顔を隠して手を振る姿が、ディケンズの怪談に忘れがたい不気味さを与える。
悲しいかな、私はこの寂寥たるステーションにある一個の哀れなる信号手に過ぎないのです。彼はなぜ私以上に信用もあり実力もある人のところへ行かないのでしょうか
警告を受けながら何もできない信号手の嘆き。谷底の孤独な持ち場で予兆に苦しむ男の姿を、岡本綺堂の格調ある訳文で伝える。
クリスマス・カロル
先ず第一に、マアレイは死んだ。それについては少しも疑いがない。
物語の書き出し。共同経営者マアレイの死をわざわざ念押しするこの一文が、やがて亡霊となって現れるマアレイと、スクルージの一夜の物語への前触れになっている(森田草平訳)。