アーヴィングの名文

アーヴィングの作品から、よく知られた一節を集めました。

5件

スリーピー・ホローの伝説

眠気をさそう夢のような力がこのあたりをおおっており、大気の中にさえ立ちこめているようだった。

「まどろみの窪」と呼ばれる谷を描く冒頭近くの一文。ハドソン河畔のオランダ系移民の村に漂う、夢とうつつの境のような空気を伝える。

しかし、この妖術をかけられた地方につきまとう主領の精霊で、空中の魔力の総大将とおぼしいのは、首の無い騎士の亡霊である。

谷の伝説の主役「首なし騎士」が初めて語られる箇所。独立戦争で頭を失った騎兵の亡霊が、夜な夜な首をさがして馬を駆るという。

風の強い日に彼が丘の背を大股で歩き、洋服をばくばくと風になびかせてゆくのを見ると、貧乏神が地上におりてきたのか、あるいは、どこかの案山子が玉蜀黍の畑から逃げだしてきたのかとまちがえるかもしれない。

やせて手足ばかり長い教師イカバッド・クレーンの姿を描く一節。名前の「鶴」そのままの風貌を、からかい半分の比喩で描き出す。

リップ・ヴァン・ウィンクル

のんびりとこの世をくらし、白パンであろうと、黒パンであろうと、なるべく頭をつかったり骨を折ったりしないで手に入るほうを食べ、働いて一ポンドの金をかせぐよりは、むしろ一ペンスしかなくても腹を空かせているほうがよかった。

お人よしで怠け者のリップの気質を描く一節。アーヴィングのユーモアがよく表れ、女房に叱られ通しの彼が憎めない人物として立ち上がる。

リップの話はすぐにすんだ。丸二十年が彼にはたった一夜に過ぎなかったからだ。

山から村へ戻ったリップが、身の上を語る場面。「アメリカの浦島太郎」とも呼ばれる物語の奇想を、短い二文で言い表している。

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