鴨長明の名文
鴨長明の作品から、よく知られた一節を集めました。
6件
方丈記
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。
万物の流転を、絶えず流れる川と水面のうたかたに託した書き出し。無常を見つめ続けた鴨長明の隠者文学を象徴する一節。
知らず、生れ死ぬる人、いづかたより來りて、いづかたへか去る。
冒頭の流水の比喩に続く一節。人はどこから来てどこへ去るのかという問いを重ね、無常の思いをいっそう深くする。
ふるさとは既にあれて、新都はいまだならず。ありとしある人、みな浮雲のおもひをなせり。
治承四年の福原遷都を記した一節。旧都は荒れ、新都はまだできない——拠り所を失った人々の不安を「浮雲のおもひ」と言い表す。
それ三界は、たゞ心一つなり。心もし安からずば、牛馬七珍もよしなく、宮殿樓閣も望なし。
方丈の庵での暮らしを語る終盤の一節。すべての世界は心ひとつにあり、心が安らかでなければ富も宮殿も意味がないとする、長明の到達した境地。
現代語訳 方丈記
河の流れは常に絶える事がなく、しかも流れ行く河の水は移り変って絶間がない。奔流に現われる飛沫は一瞬も止る事がなく、現れるや直に消えてしまって又新しく現れるのである。
「行く川のながれは絶えずして」で知られる方丈記の冒頭を口語に移した一節。無常の主題がそのまま読みとれる。
広さは僅かに一丈四方と云う小さなもので高さもそれに相当して七尺に満たないものなのである。
晩年の長明が住んだ方丈の庵を語るくだり。書名の由来となった一丈四方の小さな住まいの姿を伝える。