北原白秋の名文
北原白秋の作品から、よく知られた一節を集めました。
6件
邪宗門
われは思ふ、末世の邪宗、切支丹でうすの魔法。 黒船の加比丹を、紅毛の不可思議国を、 色赤きびいどろを、匂鋭きあんじやべいいる、 南蛮の桟留縞を、はた、阿刺吉、珍の酒を。
「邪宗門秘曲」の冒頭。異国渡りの品々を呪文のように連ね、南蛮趣味と背徳の香りをまとった白秋初期の絢爛たる一篇。
空に真赤な雲のいろ。 玻璃に真赤な酒の色。 なんでこの身が悲しかろ。 空に真赤な雲のいろ。
詩集『邪宗門』の短い一篇の全編。空の赤と酒の赤を重ね、「なんでこの身が悲しかろ」と打ち消すことで、かえって悲しみを浮かび上がらせる。
桐の花
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕
第一歌集「桐の花」の巻頭近くに置かれた一首。「な鳴きそ」の古い調べと夕日の赤が、青春の哀感を際立たせる。
君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ
歌集『桐の花』の一首。恋人を帰す朝の敷石に降る雪へ、林檎の香のように降れと呼びかける。官能と清新さが同居する、白秋の短歌の代表作。
まざあ・ぐうす
「だァれがころした、こまどりのおすを」 「そォれはわたしよ」すずめがこういった。 「わたしの弓で、わたしの矢羽で、 わたしがころした、こまどりのおすを」
「誰が駒鳥を殺したか」(Who Killed Cock Robin)の白秋訳の冒頭。問いと名乗りの掛け合いが、子供の唄らしい調子で続いていく。
へっこら、ひょっこら、へっこらしょ。 ねこが胡弓ひいた、 めうしがお月さまとびこえた、 こいぬがそれみてわらいだす、 お皿がおさじをおっかけた。 へっこら、ひょっこら、へっこらしょ。
「Hey Diddle Diddle」を訳した「お月夜」の全編。囃し言葉を「へっこら、ひょっこら」と日本の調子に移した、白秋らしい訳の妙が味わえる。