久米正雄の名文

久米正雄の作品から、よく知られた一節を集めました。

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父の死

私の父は私が八歳の春に死んだ。しかも自殺して死んだ。

久米正雄『父の死』の書き出し。校長だった父の死を、八歳の少年の目で回想する短編が、わずか二文の告白から始まる。

私は此時のかうした感激の下に永久に生きられゝばよかつたと思ふ。

『父の死』の結び。葬式で見知らぬ人に手を握られ「お父さんのやうに偉くなる」よう励まされた少年の感激を、大人の「私」が振り返る。

「私」小説と「心境」小説

さう云ふ意味から、私は此頃或る講演会で、かう云ふ暴言をすら吐いた。トルストイの「戦争と平和」も、ドストイエフスキイの「罪と罰」もフローベルの「ボリイ夫人」も、高級は高級だが、結局、偉大なる通俗小説に過ぎないと。結局、作り物であり、読み物であると。

私小説こそ散文芸術の本道だと説いた久米正雄の評論の名高い一節。西欧の大作をも「偉大なる通俗小説」と言い切る大胆さが際立つ。

この作家について

久米正雄