南方熊楠の名文
南方熊楠の作品から、よく知られた一節を集めました。
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神社合祀に関する意見
古い古いと自国を自慢するが常なる日本人ほど旧物を破壊する民なしとは、建国わずか百三十余年の米国人の口よりすら毎々嗤笑の態度をもって言わるるを聞くなり。
南方熊楠『神社合祀に関する意見』で、合祀が史蹟と古伝を滅ぼすと論じるくだり。古さを誇りながら古いものを壊す矛盾を突く。
かくのごとく神社合祀は、第一に敬神思想を薄うし、第二、民の和融を妨げ、第三、地方の凋落を来たし、第四、人情風俗を害し、第五、愛郷心と愛国心を減じ、第六、治安、民利を損じ、第七、史蹟、古伝を亡ぼし、第八、学術上貴重の天然紀念物を滅却す。
合祀の弊害を八か条にまとめた一節。信仰・暮らし・史蹟から天然記念物まで、熊楠の論点がここに一望できる。
当局はかくまで百方に大害ある合祀を奨励して、一方には愛国心、敬神思想を鼓吹し、鋭意国家の日進を謀ると称す。何ぞ下痢を停めんとて氷を喫うに異ならん。
敬神を説きながら神社を減らす政策の矛盾を、熊楠らしい卑近なたとえで切り捨てる。痛烈な比喩が論の勢いを伝える。
十二支考(虎)
虎梵名ヴィヤグラ、今のインド語でバグ、南インドのタミル語でピリ、ジャワ名マチャム、マレー名リマウ、アラブ名ニムル、英語でタイガー、その他欧州諸国大抵これに似おり、いずれもギリシアやラテンのチグリスに基づく。
『十二支考』の「虎」の書き出し。いきなり諸国語の虎の名を並べ立てる語り口に、東西の文献を縦横に引く熊楠の博識が表れている。