神社合祀に関する意見(南方熊楠)のあらすじ・登場人物
鎮守の森を守れ、自然保護の先駆
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- 32,761字
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- 約1時間6分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
南方熊楠が、明治末に政府が推し進めた神社合祀政策を痛烈に批判した意見書。一町村一社を標準に多くの神社を統廃合するこの政策が、鎮守の森を破壊し、民の信仰と暮らし、そして貴重な自然を損なうものだと、具体的な弊害を列挙して論難する。学問・信仰・経済・自然保護のあらゆる観点から合祀の非を説いた本篇は、日本における自然保護思想・エコロジーの先駆として知られる。
あらすじ
南方はまず、明治三十九年の合祀令が一町村一社を標準とし、由緒ある社にも過大な基本財産の積立を課して、事実上多くの神社を潰す仕組みであることを、条文に即して明らかにする。府県知事や郡長が功績欲しさに合祀を競い、神職や官吏が氏子を脅し、あるいは甘言をもって強引に請願書へ調印させる実態を、和歌山・大阪などの具体例とともに暴く。合祀は民の敬神の念を損ない、鎮守の森を伐り払って古来の景観と生態を破壊し、地域の歴史と結びついた信仰の場を奪う――南方は、ローマ帝国やロシアが古来の宗儀を弾圧して人心を離反させた例まで引きながら、合祀が内に人民を堕落させ、外に他国の嘲りを招くと説く。そして、性急な合祀を直ちに中止し、跡地の復旧を許し、時間をかけて神社と鎮守の森を護るべきだと、為政者に強く訴える。
冒頭部(原文より)
最初、明治三十九年十二月原内相が出せし合祀令は、一町村に一社を標準とせり。ただし地勢および祭祀理由において、特殊の事情あるもの、および特別の由緒書あるものにして維持確実なるものは合祀に及ばず、その特別の由緒とは左の五項なり。
「神社合祀に関する意見」南方熊楠(青空文庫)
末尾部(原文より)
右は請願書のようなれど、小生はかかる永たらしき請願書など出すつもりなし。何とぞ愛国篤志の人士が一人たりともこれを読んでその要を摘み、効目のあるよう演説されんことを望む。約は博より来たるというゆえ、心中存するところ一切余さず書き綴るものなり。
「神社合祀に関する意見」南方熊楠(青空文庫)
名文
古い古いと自国を自慢するが常なる日本人ほど旧物を破壊する民なしとは、建国わずか百三十余年の米国人の口よりすら毎々嗤笑の態度をもって言わるるを聞くなり。
南方熊楠『神社合祀に関する意見』で、合祀が史蹟と古伝を滅ぼすと論じるくだり。古さを誇りながら古いものを壊す矛盾を突く。
かくのごとく神社合祀は、第一に敬神思想を薄うし、第二、民の和融を妨げ、第三、地方の凋落を来たし、第四、人情風俗を害し、第五、愛郷心と愛国心を減じ、第六、治安、民利を損じ、第七、史蹟、古伝を亡ぼし、第八、学術上貴重の天然紀念物を滅却す。
合祀の弊害を八か条にまとめた一節。信仰・暮らし・史蹟から天然記念物まで、熊楠の論点がここに一望できる。
当局はかくまで百方に大害ある合祀を奨励して、一方には愛国心、敬神思想を鼓吹し、鋭意国家の日進を謀ると称す。何ぞ下痢を停めんとて氷を喫うに異ならん。
敬神を説きながら神社を減らす政策の矛盾を、熊楠らしい卑近なたとえで切り捨てる。痛烈な比喩が論の勢いを伝える。
原文を読む
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