十二支考(蛇)(南方熊楠)のあらすじ・登場人物
水の主・ミヅチをめぐる博物誌
- 文字数
- 58,101字
- 読了目安
- 約1時間56分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
「十二支考」のうち巳年にあたる「蛇に関する民俗と伝説」。1917年(大正6年)「太陽」に四回にわたって連載された。十二支に十二の動物を配当した由来を考証するところから始め、水の主としてのミヅチ、河童との関係、蛇を霊獣とみなす世界各地の信仰を渉猟する。付録として、のちに書かれた「邪視について」も収められ、目に呪力があるとする信仰の東西の広がりが論じられる。
あらすじ
十二辰に生物を配当したのは王充の『論衡』に初めて見えるというが、『淮南子』や『荘子』の注にも羊を未に当てた例があり、その由来は古いと熊楠は説く。蛇を巳に当てたのも前漢以前から行われていたのだろうか。蛇類は好んで水に近づき水に入る。砂漠の蛇でさえよく泳ぎ、インドの帽蛇は井戸にも入り遠く船を追って海へも出る。ゆえに諸国でいう水怪の多くは水中や水辺に棲む蛇である。日本でも水辺に住んで人に恐れられる蛇を「水の主」の意でミヅチと呼び、蛟の字を当てた。今のミヅシ、メドチ、ミンツチは河童のことだが、もとは人に化けて凶行する蛇をミヅチと呼んだのが、後世その変形である河童に名を奪われたのだろう——そう推論を進めていく。現存する蛇は千六百余種、寒帯と少数の島を除いて世界中の原野・山林・沼沢・湖海に棲み、劇毒をもつものも丸呑みにするものもあり、古来人類の歴史に深く関わってきた。ゆえに蛇に関する民俗と伝説は無尽蔵である。熊楠は名義、産地、生態、信仰、説話と項目を立てて、その一斑を書き集めていく。
冒頭部(原文より)
『古今要覧稿』巻五三一に「およそ十二辰に生物を配当せしは王充の『論衡』に初めて見たれども、『淮南子』に山中未の日主人と称うるは羊なり、『荘子』に〈いまだかつて牧を為さず、而して奥に生ず〉といえるを『釈文』に西南隅の未地といいしは羊を以て未に配当せしもその由来古し」と論じた。
「十二支考(蛇)」南方熊楠(青空文庫)
末尾部(原文より)
追加 前項に、今より千二百七十年ほどの昔、唐の顕慶年間、李善が書いた『文選』の註に、鶏好邪視とあるを、邪視なる語のもっとも早くみえた一例として置いた。その後また捜索すると、それより少なくとも五百二十年古く、後漢の張平子の『西京賦』に……この邪睨は邪視と同じくイヴル・アイを意味し、支那でイヴル・アイをいい表わした最も古い語例の一つだろう。
「十二支考(蛇)」南方熊楠(青空文庫)
原文を読む
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