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十二支考(竜)(南方熊楠)のあらすじ・登場人物

俵藤太、竜宮に入るの話

南方熊楠 1916年(大正5年)1月 「太陽」

文字数
62,324字
読了目安
約2時間5分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

「十二支考」のうち辰年にあたる一編で、正式な題は「田原藤太竜宮入りの話」。1916年(大正5年)「太陽」に三回にわたって連載された。近江の瀬田橋で大蛇に頼まれ、三上山の大蜈蚣を射殺して竜宮へ招かれたという俵藤太秀郷の伝説を、『太平記』の記述から説き起こし、その一つひとつの要素に世界各地の対応する説話を探していく。竜蛇信仰をめぐる熊楠の博識がもっとも縦横に発揮された一編である。

あらすじ

俵藤太秀郷の竜宮入り伝説について、熊楠は自分の知るかぎり『太平記』十五巻に出たものが最も古い完全な形だと述べ、まずその本文を引く。瀬田の唐橋に横たわる大蛇をものともせず踏み越えた秀郷が、その夜、美女に姿を変えた竜宮の使いに頼まれて、三上山を七巻きする大蜈蚣を矢で射殺し、礼として竜宮に招かれて尽きることのない巻絹と俵を賜わったという話である。熊楠はこの物語を要素ごとに解体し、大蛇を踏み越える剛胆、矢に唾をつけて射る呪法、蜈蚣と竜の対立、尽きぬ袋という宝物のモティーフについて、支那・インド・ヨーロッパの類話を次々に並べていく。竜蛇を女人の標識とする信仰、人と竜蛇が交わって子孫を生じたという伝承、竜蛇を男女の陰相になぞらえて崇拝した宗義まで話は及ぶ。結びに熊楠は、この伝説が「漫然無中有を出した丸嘘談」ではなく、事ごとにその出処と根底があるのだと述べ、蛇の話は来る巳の年の新年号に書くから待たれよと予告している。

冒頭部(原文より)

話の本文  この話は予の知るところでは、『太平記』十五巻に出たのが最も古い完全な物らしい、馬琴の『昔語質屋庫』二に、ある書にいわくと冒頭して引いた文も多分それから抄出したと見える。

「十二支考(竜)」南方熊楠(青空文庫)

末尾部(原文より)

 これを要するに秀郷竜宮入りの譚は漫然無中有を出した丸嘘談でなく、事ごとにその出処根底ある事上述のごとく、そのうち秀郷一、二の矢を射損じ第三の矢で蜈蚣を射留めたと言うに類した那智の一蹈ちゅう怪物退治の話がある、また『近江輿地誌略』に秀郷竜女と諧うたという談については、古来諸国で竜蛇を女人の標識としたり、人と竜蛇交わって子孫生じたと伝え……それらは鬼が笑う来巳の年の新年号に「蛇の話」として出すから読者諸君は竜の眼を瞼り蛇の鎌首を立て竢ちたまえというのみ。

「十二支考(竜)」南方熊楠(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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