宮本百合子の名文
宮本百合子の作品から、よく知られた一節を集めました。
3件
貧しき人々の群
けれども、私はどうぞして倒れ得る者になりとうございます。地響を立てて倒れ得る者になりとうございます。
十七歳で世に出た宮本百合子の『貧しき人々の群』の「序にかえて」。恐れず進み、倒れてもまた起き上がりたいという決意が若々しい。
伸子
苦々しい心が湧き、伸子は目を逸した。飼鳥になっては堪らない。そういう心持がした。
宮本百合子『伸子』の結び近く。籠に戻った十姉妹になぞらえて引き留める夫・佃に、伸子は飼われる鳥にはなるまいと心を決める。
播州平野
この国道を、こうして運ばれることは、一生のうちに、もう二度とはないことであろう。今すぎてゆく小さな町の生垣。明石の松林の彼方に赤錆て立っている大工場の廃墟。それらをひろ子は消されない感銘をもって眺めた。日本じゅうが、こうして動きつつある。ひろ子は痛切にそのことを感じるのであった。
『播州平野』の結び。敗戦の秋、夫・重吉のもとへ荷馬車で向かうひろ子が、動きはじめた戦後の日本を全身で感じとる。