高見順の名文

高見順の作品から、よく知られた一節を集めました。

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如何なる星の下に

――アパートの三階の、私の佗しい仕事部屋の窓の向うに見える、盛り場の真上の空は、暗くどんよりと曇っていた。

高見順『如何なる星の下に』の本文の書き出し。浅草の盛り場を見おろす仕事部屋から、作家の「私」の憂鬱な日々が語りはじめられる。

いやな感じ

暗い踏切の手前で円タクをとめた。旦那、お楽しみですねと若い運転手がにやにやしながら、釣り銭を出した。なに、言ってやがると砂馬慷一はその小ぜにをひったくるようにした。

高見順『いやな感じ』の書き出し。昭和初期のアナーキスト「俺」の一人称で、場末の魔窟へ向かう場面から、べらんめえ調の語りが始まる。

死の淵より

電車の窓の外は 光りにみち 喜びにみち いきいきといきづいている この世ともうお別れかと思うと 見なれた景色が 急に新鮮に見えてきた

高見順の詩集『死の淵より』の「電車の窓の外は」。食道がんの闘病中、車中のメモをもとに書かれ、別れを思うほど輝いて見える世界を歌う。

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高見順