柳田国男の名文

柳田国男の作品から、よく知られた一節を集めました。

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遠野物語

国内の山村にして遠野よりさらに物深き所にはまた無数の山神山人の伝説あるべし。願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。

序文の結び。山人や神々の話を知らぬ都市の人間へ突きつけた宣言で、日本民俗学の出発点を告げる一句として知られる。

この話はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり。昨明治四十二年の二月ごろより始めて夜分おりおり訪ね来たりこの話をせられしを筆記せしなり。鏡石君は話上手にはあらざれども誠実なる人なり。自分もまた一字一句をも加減せず感じたるままを書きたり。

序文の書き出し。遠野出身の佐々木喜善(鏡石)の語りを、一字一句も加減せずに書き留めたと記して、民間伝承を記録する姿勢を宣言している。

山の人生

今では記憶している者が、私の外には一人もあるまい。三十年あまり前、世間のひどく不景気であった年に、西美濃の山の中で炭を焼く五十ばかりの男が、子供を二人まで、鉞で斫り殺したことがあった。

本編冒頭の章「山に埋もれたる人生あること」の書き出し。柳田が法制局で目にした記録に基づく、貧しさの果ての悲劇が淡々と語られ、民俗学の名著の中でも強い印象を残す。

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柳田国男