高等遊民とは
- 分類
- その他
- 読み
- こうとうゆうみん
高等教育を受けながら定職に就かず、世俗の労苦を離れて暮らす人を指す、明治末から昭和初期にかけての語。学校を出ても職を得られない知識青年が増えると、彼らは社会問題として論じられ、為政者や世論は不満を抱えた若者が危険思想に傾くことを警戒した。文学では夏目漱石の作品によって広く知られる。『彼岸過迄』(明治45年)では、就職口を探して奔走する青年・田川敬太郎が、友人須永の叔父にあたる松本恒三と出会い、松本は「僕のような高等遊民」と自らを呼んでみせる。敬太郎は「自分で高等遊民だと名乗るもの」に会ったのは初めてだと感じ、そのゆったりとした応対に「高等遊民の本色」を見る。これに先立つ『それから』(明治42年)の長井代助も、三十になっても職に就かず、父の援助で読書や音楽に親しむ暮らしを送る人物で、父からは「遊民」とたしなめられるが、自らは職業に汚されない時間を持つ者と考えている。代助はこの語を体現する人物として、しばしば高等遊民の典型に挙げられる。経済的な余裕に支えられた自由と、それゆえに社会から浮き上がる知識人の姿は、漱石が繰り返し描いた主題の一つである。