それから(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
世間を捨てて心に従う恋
- 作者
- 夏目漱石
- 発表
- 1909年(明治42年)6月
- 初出
- 朝日新聞
- 種別
- 小説
- ジャンル
- 恋愛
- 心理
- 舞台
- 東京都
- 文字数
- 172,811字
- 読了目安
- 約5時間46分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
夏目漱石の前期三部作(「三四郎」「それから」「門」)の第二作となる長編小説。1909年(明治42年)6月から10月にかけて東京朝日新聞・大阪朝日新聞に連載された。働かずに親の財産で暮らす高等遊民・長井代助が、かつて親友に譲った女性への思いを断ち切れず、世間の常識を捨てて自らの心に従う道を選ぶまでを描く。近代的自我の目覚めと社会的破滅を対置させた作品として、漱石文学の転換点をなす一作である。
あらすじ
三十歳の長井代助は、実業家の父の庇護のもと働かずに暮らす高等遊民である。ある日、学生時代の親友・平岡が、勤めていた銀行の不始末で職を失い、妻の三千代を伴って東京に戻ってくる。三千代はかつて代助が愛しながらも、平岡の求婚を知って身を引き、友情のために結ばれるよう取り計らった相手だった。困窮する平岡夫婦を助けるうち、代助は三千代への思いが消えていなかったことに気づいていく。折しも父からは資産家の娘との縁談を強く勧められ、代助は窮地に立たされる。三千代が心臓を病んでいることを知った代助は、ついに三千代へ自分の思いを打ち明け、平岡に三千代を譲ってほしいと告げる。裏切られた平岡は絶縁を宣言して去り、事の次第を知った父や兄からも勘当同然に見放された代助は、生活の糧を失う。三千代の病状を案じながら職を探しに焼けつくような日差しの中へ出た代助の頭は、世界がすべて赤く回転して見えるほどの錯乱に陥るのだった。
登場人物
- 長井代助 三十歳の高等遊民。実業家の父の庇護で働かずに暮らす本作の主人公
- 平岡常次郎 代助の学生時代の親友。銀行の不始末で職を失い東京に戻る
- 三千代 平岡の妻。かつて代助が愛しながら平岡に譲った女性
- 長井得(誠吾の父) 代助の父。実業家で、代助に資産家の娘との結婚を強く勧める
- 長井誠吾 代助の兄。家業を継ぐ実業家
- 梅子 誠吾の妻。代助を何かと気にかける嫂
人物相関図
章ごとの「厳選あらすじ」
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- 一 この作品について
- 二 主要人物
- 三 主要なサブキャラクター
- 四 目覚め──椿の音と平岡の帰京
- 五 長井の家──父の説教と佐川の縁談
- 六 麺麭の議論──働かないという主張
- 七 鈴蘭と百合──三千代への接近
- 八 自然の児か、意志の人か
- 九 白百合の告白
- 一〇 絶交と勘当
- 一一 結末──焼け尽きるまで
- 一二 重要な設定と伏線
冒頭部(原文より)
誰か慌ただしく門前を馳けて行く足音がした時、代助の頭の中には、大きな俎下駄が空から、ぶら下っていた。けれども、その俎下駄は、足音の遠退くに従って、すうと頭から抜け出して消えてしまった。そうして眼が覚めた。
『それから』夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
忽ち赤い郵便筒が眼に付いた。するとその赤い色が忽ち代助の頭の中に飛び込んで、くるくると回転し始めた。傘屋の看板に、赤い蝙蝠傘を四つ重ねて高く釣るしてあった。傘の色が、又代助の頭に飛び込んで、くるくると渦を捲いた。四つ角に、大きい真赤な風船玉を売ってるものがあった。電車が急に角を曲るとき、風船玉は追懸て来て、代助の頭に飛び付いた。小包郵便を載せた赤い車がはっと電車と摺れ違うとき、又代助の頭の中に吸い込まれた。烟草屋の暖簾が赤かった。売出しの旗も赤かった。電柱が赤かった。赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。仕舞には世の中が真赤になった。そうして、代助の頭を中心としてくるりくるりとの息を吹いて回転した。代助は自分の頭が焼け尽きるまで電車に乗って行こうと決心した。
『それから』夏目漱石(青空文庫)
名文
誰か慌ただしく門前を馳けて行く足音がした時、代助の頭の中には、大きな俎下駄が空から、ぶら下っていた。
目覚めぎわの意識から書き起こす書き出し。働かずに暮らす代助が、友の妻への思いへと踏み出していく長編の幕開け。
代助は自分の頭が焼け尽きるまで電車に乗って行こうと決心した。
最後の一行。職を探しに出た代助の目に世界のすべてが赤く映る、近代小説でも名高い結末。
原文を読む
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