雁(森鴎外)のあらすじ・登場人物
無縁坂ですれ違う妾と医学生
- 作者
- 森鴎外
- 発表
- 1911年(明治44年)9月
- 初出
- スバル
- 種別
- 小説
- ジャンル
- 恋愛
- 心理
- 舞台
- 東京都
- 文字数
- 73,892字
- 読了目安
- 約2時間28分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
森鴎外が1911年(明治44年)9月から1913年(大正2年)5月にかけて「スバル」に断続的に連載した長編小説。明治13年の東京を舞台に、高利貸・末造の妾となった娘お玉が、無縁坂を散歩で通る医学生・岡田にほのかな恋心を寄せる物語。偶然に阻まれて結ばれることのない二人の姿を、岡田の旧友である「僕」の回想として静かに描く。青魚の煮肴と一羽の雁が運命を分ける結構の妙と、明治東京の情景描写で名高い鴎外中期の代表作である。
あらすじ
明治13年、東京大学の鉄門前の下宿・上条に住む「僕」の隣室には、学生たちに好かれる美男の医学生・岡田がいた。岡田は散歩の途中、無縁坂の妾宅の窓に見える女・お玉と顔を合わせるうち、会釈を交わす仲になる。お玉は、貧しい飴細工売りの父を楽にしたい一心で、正直な商人と信じた末造の妾になったが、末造の正体が高利貸と知って絶望し、窓の外を通る学生・岡田をひそかに心の支えとするようになっていた。末造の留守の夜、お玉は思い切って岡田に声をかけようと決心する。だがその日、上条の夕食に岡田の嫌いな青魚の煮肴が出たために、僕は岡田を散歩に誘い出してしまう。不忍池のほとりで、岡田は友人に促されて投げた石で、思いがけず一羽の雁を殺す。連れがいたため、お玉が声をかける機会は永遠に失われた。岡田は翌日、洋行の途につき、お玉とは二度と相見ることがなかったのである。
登場人物
- お玉 父を楽にするため高利貸の妾となった娘。窓越しに見る岡田に心を寄せる
- 岡田 無縁坂を散歩で通う美男の医学生。雁を殺した夜に洋行が決まる
- 末造 お玉を囲う高利貸。もとは大学の小使上がり
- 僕 岡田の隣室に住む学生。物語の語り手
- お玉の父 飴細工売りの老人。娘思い
人物相関図
章ごとの「厳選あらすじ」
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- 一 この作品について
- 二 主要人物
- 三 主要なサブキャラクター
- 四 導入──無縁坂の窓の女
- 五 飴細工屋の娘──お玉が妾になるまで
- 六 高利貸の妾──肴屋の一言
- 七 池の端の家庭──蝙蝠傘が暴いたもの
- 八 蛇退治──籠の鳥と救い手
- 九 千載一遇の日──青魚の未醤煮
- 十 結末──不忍池の雁
- 十一 重要な設定と伏線
冒頭部(原文より)
古い話である。僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している。どうして年をはっきり覚えているかと云うと、その頃僕は東京大学の鉄門の真向いにあった、上条と云う下宿屋に、この話の主人公と壁一つ隔てた隣同士になって住んでいたからである。
『雁』森鴎外(青空文庫)
末尾部(原文より)
一本の釘から大事件が生ずるように、青魚の煮肴が上条の夕食の饌に上ったために、岡田とお玉とは永遠に相見ることを得ずにしまった。そればかりでは無い。しかしそれより以上の事は雁と云う物語の範囲外にある。 僕は今この物語を書いてしまって、指を折って数えて見ると、もうその時から三十五年を経過している。
『雁』森鴎外(青空文庫)
名文
古い話である。僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している。
遠い記憶をたぐり寄せるように語り起こす書き出し。高利貸しの妾お玉と学生岡田の、すれ違ったまま終わる恋が語られる。
原文を読む
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