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坊っちゃん(夏目漱石)のあらすじ・登場人物

無鉄砲な江戸っ子教師の痛快譚

  • 詳細なあらすじ
  • 人物相関図
  • 風刺
  • 青春

夏目漱石 1906年(明治39年)4月 「ホトトギス」

文字数
88,503字
読了目安
約2時間57分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 愛媛県

この作品について

1906年(明治39年)4月の『ホトトギス』に発表された夏目漱石の小説。東京育ちの青年が、物理学校を卒業して四国の中学校の数学教師となり、初めての土地と職場に飛び込んでいく。子供の頃から向こう見ずで、周囲と衝突してきた主人公自身が、江戸っ子らしい歯切れのよい言葉で体験を語る。「赤シャツ」「山嵐」など、赴任先で出会う教師たちにつけるあだ名には、その人となりと同時に、語り手の好き嫌いもよく表れる。生徒のいたずらや同僚との会話を通して、正直さと世渡り、親切と打算をめぐる判断が揺れ動くところに面白さがある。東京で自分をかわいがってくれた女中の清への思いも、新任教師の心を知る大切な手がかりとなる。威勢のよい啖呵と失敗談が続く文章を楽しみながら、組織の中で人を信じる難しさにも触れられる作品である。

あらすじ

子供の頃から向こう見ずな性分で家族から疎まれて育った「坊っちゃん」だが、老女中の清だけは彼を溺愛し、将来を楽しみにしていた。物理学校を卒業した坊っちゃんは、四国の中学校に数学教師として赴任する。田舎の風習に馴染めない坊っちゃんは、すぐに生徒たちのいたずらに悩まされ、また教頭の「赤シャツ」とその腰巾着「野だいこ」といった狡猾な同僚たちの策略にも巻き込まれていく。剛直な同僚「山嵐」と意気投合した坊っちゃんは、赤シャツたちの卑劣な振る舞いに次第に怒りを募らせ、ついに山嵐と共に赤シャツと野だいこを待ち伏せして殴りつけ、教師を辞めて東京へ戻る。街鉄の技手となった坊っちゃんは清と再び暮らし始めるが、清は肺炎のため亡くなり、坊っちゃんの菩提寺に葬られるのだった。

登場人物

人物相関図

ただ一人おれを真っ直だと信じる一銭五厘の意地を越えて同志になる山嵐と組んで天誅。卵と拳骨を浴びせる校長を動かし人事を通す辞表を迫る延岡へ一級俸上げて転任を通告許嫁を横取りし学校から追い落とす嫁ぐ約束をしていた家運が傾くと靡くどこへでも随行し一段下品に復唱する弟。おれの受け持ち組に通わせる祝勝会の踴りに誘い出す骨董を売りつけ嘘で追い出すマドンナの真相を聞かせる下宿の婆この下宿を周旋する角屋で行き会い張り込みの突破口にきよ清十年来の下女。おれをただ一人賞め続けたたぬき狸(校長)何かあると頭を下げ、何ひとつ決めないこすず小鈴送別会に出た芸者。一番若くて一番奇麗やまあらし(ほった)山嵐(堀田)数学主任。会津出身で生徒に人望があるぼっちゃんおれ東京から来た数学教師。親譲りの無鉄砲あかシャツ赤シャツ文学士の教頭。品性を説いて奸計を巡らすのだいこ(よしかわ)野だいこ画学教師。赤シャツに随行する幇間いかぎんいか銀最初の下宿の主。骨董の贋物を売りつけるはぎののばあさん萩野の婆さん二番目の下宿の主。世間話が情報源になるうらなり(こが)うらなり英語教師。母と暮らす土地の士族とおやまのおじょうさんマドンナここら一番の別嬪。作中で一言も喋らないあかシャツのおとうと赤シャツの弟おれの受け持ち組の生徒。兄の策に使われる
人物の関係を整理した相関図(アプリ収録の図をそのまま掲載しています)

章ごとの「詳細なあらすじ」

アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。

  1. 一 この作品について
  2. 二 主要人物
  3. 三 主要なサブキャラクター
  4. 四 親譲りの無鉄砲──清という味方
  5. 五 赴任──渾名をつけた学校
  6. 六 宿直の夜──バッタと鬨の声
  7. 七 釣りと会議──赤シャツの謎かけ
  8. 八 萩野の婆さん──マドンナの真相
  9. 九 うらなりの左遷と送別会
  10. 一〇 祝勝会の喧嘩と新聞
  11. 一一 天誅──そして東京へ
  12. 一二 重要な設定と伏線

冒頭部(原文より)

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

「坊っちゃん」夏目漱石(青空文庫)

末尾部(原文より)

清の事を話すのを忘れていた。――おれが東京へ着いて下宿へも行かず、革鞄を提げたまま、清や帰ったよと飛び込んだら、あら坊っちゃん、よくまあ、早く帰って来て下さったと涙をぽたぽたと落した。おれもあまり嬉しかったから、もう田舎へは行かない、東京で清とうちを持つんだと云った。その後ある人の周旋で街鉄の技手になった。月給は二十五円で、家賃は六円だ。清は玄関付きの家でなくっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎に罹って死んでしまった。死ぬ前日おれを呼んで坊っちゃん後生だから清が死んだら、坊っちゃんのお寺へ埋めて下さい。お墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待っておりますと云った。だから清の墓は小日向の養源寺にある。

「坊っちゃん」夏目漱石(青空文庫)

名文

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。

「親譲りの無鉄砲」と自らを語り出す、日本一名高い書き出しの一つ。江戸っ子気質の主人公が一息に立ち上がる。

だから清の墓は小日向の養源寺にある。

最後の一行。江戸っ子の啖呵で押し通してきた語りが、下女の清への情だけを静かに残して閉じられる。

「あなたは真っ直でよいご気性だ」

家族に疎まれる幼い「おれ」を、下女の清がほめる言葉。誰にも認められない主人公をまっすぐに信じる清の愛情が、作品を貫く温かさとなる。

小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

冒頭の「親譲りの無鉄砲」に続く逸話。からかわれて二階から飛び降りる向こう見ずな少年時代が、坊っちゃんの一本気な人柄を一息に語る。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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