風の又三郎(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

風とともに来た不思議な転校生

作者
宮沢賢治
発表
1934年(昭和9年)
ジャンル
  • 幻想
  • 青春
文字数
30,341字
読了目安
約1時間1分
表記
新字新仮名

この作品について

宮沢賢治の代表作の一つで、賢治の死後1934年(昭和9年)に発表された童話小説。風とともにやって来た不思議な転校生を、風の神「風の又三郎」ではないかと信じる村の子供たちとの、二百十日前後の数日間を描く。方言と共通語の対比や、少年たちの心理の機微を通して、賢治独特の幻想と現実の織り交ざった世界観を伝える代表作である。

あらすじ

二百十日を間近に控えた九月一日、山あいの小さな小学校に、赤毛で丸い黒目をした風変わりな転校生・高田三郎がやって来る。強風の吹くなかで現れ、皆が話す東北弁とは違う言葉を話す三郎を、村の子供たちは戸惑いながらも仲間に加える。とりわけ嘉助は、三郎こそ風とともに現れては去っていくという風の神「風の又三郎」の生まれ変わりに違いないと信じ込む。一郎ら年上の子供たちに見守られながら、三郎は牧場や川、山の畑へと村の子供たちと連れ立って遊びまわり、次第に打ち解けていく。ある日、放牧地から逃げた馬を追って山に入った嘉助は、深い霧のなかで強風に巻かれて気を失い、ガラスのマントと靴を身にまとって風に乗り飛び去る三郎の幻を見る。そして幾日か後、三郎は父親の仕事の都合で、やって来たときと同じように、強い風とともに再びどこへともなく去っていくのだった。

登場人物

人物相関図

すぐ前の席。又三郎だと最初に言い出すそだないよと否定しつづける従兄弟。同じおじいさんを持つ通信簿も宿題帳も無いのを黙って通すモリブデンを掘りに来た父木の上から雫を浴びせて怒らせる自分の鉛筆を黙って差し出す妹。鉛筆を取り上げて泣かせる兄。霧の中から二人を捜し出す二人の祖父。栗の木の下で団子を焼く魚返すよと置かれ怪訝な顔をするいちろうのにいさん一郎のにいさん上の野原で草を刈る青年おじいさんおじいさん一郎と嘉助の祖父せんせい先生一年から六年までを一人で受け持つさぶろうのちち三郎の父上の野原へモリブデンを掘りに来たいちろう一郎六年生。ただ一人の最上級生かすけ嘉助五年生。三郎のすぐ前の席になるたかださぶろう高田三郎北海道から来た転校生。動くたびに風が吹くしょうすけ庄助さいかち淵で発破をかける下流の坑夫こうすけ耕助葡萄の藪を人に教えたくない村の子さたろう佐太郎四年生。魚の毒もみを企てるかよかよ佐太郎の妹の二年生
人物の関係を整理した相関図(アプリ収録の図をそのまま掲載しています)

章ごとの「厳選あらすじ」

アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。

  1. 一 この作品について
  2. 二 主要人物
  3. 三 主要なサブキャラクター
  4. 四 九月一日──教室にいた赤い髪の子
  5. 五 二日目──歩数と鉛筆
  6. 六 上の野原──霧の中のガラスのマント
  7. 七 葡萄蔓とりの日──「風が吹いたんだい」
  8. 八 さいかち淵──発破と専売局
  9. 九 毒もみと鬼っこ──「雨はざっこざっこ雨三郎」
  10. 一〇 二百十日の朝──去っていった三郎
  11. 一一 重要な設定と伏線

冒頭部(原文より)

どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう 谷川の岸に小さな学校がありました。教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗の木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴く岩穴もあったのです。さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。黒い雪袴をはいた二人の一年生の子がどてをまわって運動場にはいって来て、まだほかにだれも来ていないのを見て、「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」とかわるがわる叫びながら大よろこびで門をはいって来たのでしたが、ちょっと教室の中を見ますと、二人ともまるでびっくりして棒立ちになり、それから顔を見合わせてぶるぶるふるえましたが、ひとりはとうとう泣き出してしまいました。

『風の又三郎』宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

宿直室のほうで何かごとごと鳴る音がしました。先生は赤いうちわをもって急いでそっちへ行きました。二人はしばらくだまったまま、相手がほんとうにどう思っているか探るように顔を見合わせたまま立ちました。風はまだやまず、窓ガラスは雨つぶのために曇りながら、またがたがた鳴りました。

『風の又三郎』宮沢賢治(青空文庫)

名文

どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう

風の音をそのまま言葉にした冒頭の唄。転校生の高田三郎を風の精「又三郎」と信じた子どもたちの、九月のふしぎな十二日間を呼び込む。

原文を読む

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