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三四郎(夏目漱石)のあらすじ・登場人物

「ストレイ・シープ」青春の迷い

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  • 人物相関図
  • 恋愛
  • 青春

夏目漱石 1908年(明治41年)9月 「朝日新聞」

文字数
169,778字
読了目安
約5時間40分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1908年(明治41年)9月から12月にかけて『朝日新聞』に連載された長編小説。『それから』『門』とともに漱石の前期三部作に数えられる。熊本の高等学校を卒業して東京の大学へ進んだ小川三四郎が、学友や研究者、教師、若い女性たちと出会い、初めての都会生活に戸惑う姿を描く。漱石は連載予告で、新しい環境に人物を置き、その交わりから物語が生まれるという趣旨を述べている。三四郎の目に映る大学の研究室や下宿、往来や展覧会には、学問や芸術への憧れと、近代都市の落ち着かなさが共存する。軽妙な会話や何気ない身ぶりを通して、相手の言葉を理解しきれない青年の距離感が浮かび上がる。恋愛を軸にしつつ、知識人の生き方や当時の社会を批評する群像劇としても読める作品である。翌1909年5月に春陽堂から単行本が刊行された。

あらすじ

熊本の高等学校を卒業した小川三四郎は、東京帝国大学に入学するため上京する。汽車で乗り合わせた女や、車中で語り合った男(のちの広田先生)との出会いを通じて、三四郎は自分の知らない広い世界の入り口に立たされる。東京では、同郷の先輩で理科大学の研究者である野々宮宗八や、世話好きな学友の佐々木与次郎、与次郎が師と仰ぐ高等学校教師の広田先生と知り合い、それぞれの生き方に触れていく。そんななか三四郎は、大学の池のほとりで出会った美しい女性・里見美禰子に強く心を惹かれる。美禰子は聡明で自由にふるまうが、その心の内は三四郎には掴めない。菊人形見物の日、人ごみを離れて畑のそばに座り、美禰子は三四郎に「迷える子(ストレイ・シープ)」という言葉をつぶやく。やがて与次郎の借金騒動や広田先生をめぐる運動などに巻き込まれながらも、三四郎の思いは美禰子へと傾いていくが、美禰子は三四郎の知らぬ間に兄の友人との縁談を受け入れてしまう。美禰子をモデルにした絵「森の女」が展覧会に飾られるのを眺めながら、三四郎はただ口の中で「迷羊、迷羊」と繰り返すのだった。

登場人物

人物相関図

迷える子。何も言えず終わる度胸のないかたと言い当てる長い手紙で国から縛る縁談を勧めるとらわれるなと頭を耕す二階に居候東京を教え、金の綾を作る肖像「森の女」を描き上げる兄。放任主義兄の友人と結婚する友人同郷の先輩。見えない競争相手招待状を引き千切る兄妹美禰子の結婚を告げる汽車の女名古屋まで同じ車室に乗り合わせた女ひろたせんせい広田先生高等学校の英語教師。世に知られぬ四十男ささきよじろう佐々木与次郎三四郎の学友。広田の家の二階に居候はらぐち原口髭をはやした洋画家。好事家三四郎の母国から長い手紙を書き送ってくるおがわさんしろう小川三四郎九州から上京した東京帝大の新入生さとみみねこ里見美禰子本郷真砂町に住む。兄と二人暮らしさとみきょうすけ里見恭助美禰子の兄。法学士美禰子の夫恭助の友人。名は最後まで出てこないみわたのおみつ三輪田のお光国の許嫁候補。作中には一度も現れないののみやそうはち野々宮宗八三四郎と同郷の先輩。理科大学の研究者ののみやよしこ野々宮よし子宗八の妹。思ったことをそのまま言う
人物の関係を整理した相関図(アプリ収録の図をそのまま掲載しています)

章ごとの「詳細なあらすじ」

アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。

  1. 一 この作品について
  2. 二 主要人物
  3. 三 主要なサブキャラクター
  4. 四 上京──汽車の女と「滅びるね」
  5. 五 三つの世界──轢死の夜と病院の朝
  6. 六 迷える子──菊人形と秋の小川
  7. 七 偉大なる暗闇──与次郎の運動
  8. 八 三十円──借りた金がつなぐもの
  9. 九 森の女──画室と会堂の前
  10. 一〇 結末──迷羊、迷羊
  11. 一一 重要な設定と伏線

冒頭部(原文より)

うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。このじいさんはたしかに前の前の駅から乗ったいなか者である。発車まぎわに頓狂な声を出して駆け込んで来て、いきなり肌をぬいだと思ったら背中にお灸のあとがいっぱいあったので、三四郎の記憶に残っている。じいさんが汗をふいて、肌を入れて、女の隣に腰をかけたまでよく注意して見ていたくらいである。

「三四郎」夏目漱石(青空文庫)

末尾部(原文より)

「森の女という題が悪い」「じゃ、なんとすればよいんだ」三四郎はなんとも答えなかった。ただ口の中で迷羊、迷羊と繰り返した。

「三四郎」夏目漱石(青空文庫)

名文

「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、 「滅びるね」と言った。

上京の汽車で乗り合わせた男(広田先生)の一言。日露戦争後の高揚に水を差すこの三文字が、青年三四郎の前途にも作品全体にも影を落とす。

その時も一人ではなかった。迷羊。迷羊。雲が羊の形をしている。

美禰子の結婚を知る終盤で繰り返される一語。「迷羊」はストレイ・シープの訳で、行き先を決めかねる三四郎自身を指す。

「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓の引き倒しになるばかりだ」

上京する汽車で乗り合わせた広田先生の言葉。これを聞いた三四郎は、熊本にいた頃の自分の狭さを悟り、本当に故郷を出た心持ちになる。

かあいそうだたほれたってことよ

英語の句“Pity's akin to love”を与次郎が訳してみせた言葉。広田先生には下劣と叱られるが、美禰子への三四郎の思いに重なる訳句として知られる。

「我はわが愆を知る。わが罪は常にわが前にあり」

別れ際に美禰子が口にする旧約聖書「詩篇」の一節。三四郎への思いと自分の選択を、罪の告白に託してかすかに打ち明ける場面として名高い。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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