ト書きとは

分類
文体・技法
読み
とがき

戯曲や脚本で、登場人物のせりふ以外に、動作、表情、登退場、舞台の状況などを記す部分。場面の時や場所、装置、照明、音などを説明することもある。名称は歌舞伎の台帳で、せりふに続く動作の指定を「ト」で始めて記したことに由来する。現代の戯曲で必ず片仮名の「ト」を付けるという意味ではない。たとえば、同じせりふでも、相手を見つめて言うのか、背を向けて言うのか、長く黙ったあとで言うのかによって、場面の意味は変わる。ト書きはそのような言葉以外の情報を与え、読者や上演者に舞台を想像させる。一般には観客へそのまま読み上げるせりふではなく、動作や演出として示される部分である。近代の写実的な劇では、人物の生活環境や細かな行動を記すことで、心理や人間関係を表す働きも大きくなった。ただし、記述の詳しさや文体は作者・作品によって異なり、簡潔な指定にとどめるものもある。戯曲を読む際には、せりふだけを追わず、沈黙や動きがどこに置かれているかを合わせて見る必要がある。舞台の見え方を伝えるとともに、せりふの意味を補い、時には言葉と行動の食い違いを示す重要な部分である。

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