英彦山に登る(杉田久女)のあらすじ・登場人物
通うほどに深まる英彦山の魅力
- 文字数
- 2,436字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
杉田久女が、福岡と大分の境にある英彦山に夏のあいだ五、六度登った体験を書いた山の随筆。上宮までの樹海の道は単調で、つまらない山だとも言われるが、古老の伝説を聞き、三山を縦走し、岩峰の連なる谷間を巡るうちに、山への親しみと興味が深まっていく。
あらすじ
書き出しは、今年は英彦山に五、六度登った、という一文。ある人々は彦山をつまらぬ山だというと久女は受けとめる。たしかに、銅の大鳥居から四十二丁の上宮までは樹海の中を登りつめる道で、見晴らしはなく、谿流も添わず、大英彦の全体を眺めることもできないので、一通りの登山では変化のない山に思えるのもむりはない。だが、一夏を山で過ごし、古老から彦山伝説の数々を聞き、絶頂の三山を高嶺づたいに登り、豊前坊から北岳の険を越え、南岳の岸壁を下りて巨岩の林立する谷間を仰ぐうち、この山に異常な興味と親しみを覚えるようになった。南岳の原生林の深山らしさにも触れ、三山を極めてはじめて彦山の真価がわかると結ぶ。
冒頭部(原文より)
私は今年英彦山に五六度登った。 或人々は彦山はつまらぬ山だという。 成程銅の大鳥居から四十二丁の上宮迄は樹海の中を登りつめるので、見はらしはなし、谿流は添わず、大英彦全体を眺める事の出来ない凹凸の多い山なので、ひととおりの登山丈では、一向変化のないつまらぬ山と思えるのもむりはない。
「英彦山に登る」杉田久女(青空文庫)
末尾部(原文より)
(附記)彦山はほんとによい山だ。山陽も、「彦山真に秀彦也」とうたっている。之は山陽の誇張丈でなく、山陽は耶馬渓から守実ごしに、彦山の紅葉を賞し、彦山の秀彦たるところをきっと感じたに違いない。南岳をよじる時私は、たしかにそう感じた。南岳の原生林をぬける時の深山らしい感じは、上宮道にはない。三山をきわめてはじめて彦山の真価はわかる。 (発表誌年月未詳)
「英彦山に登る」杉田久女(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
- 梟啼く 1918年(大正7年)11月
- 朱欒の花のさく頃 1920年(大正9年)10月
- 大正女流俳句の近代的特色 1928年(昭和3年)2月