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絶対矛盾的自己同一(西田幾多郎)のあらすじ・登場人物

作られたものから作るものへ

西田幾多郎 1939年(昭和14年)3月 「思想」

文字数
49,821字
読了目安
約1時間40分
表記
新字新仮名

この作品について

西田幾多郎が1939年(昭和14年)3月の「思想」第202号に発表した論文。題名の「絶対矛盾的自己同一」は、後期西田哲学を代表する概念として広く知られる。現実の世界は物と物とが相働く世界であり、多と一、過去と未来、主体と環境とが互いに否定し合いながら一つの現在において結びつく――西田はそうした世界を「作られたものから作るものへ」と動いていく創造的な世界としてとらえる。人間を物を作る存在(ホモ・ファーベル)と見る視点から、時間、生命、身体、社会、知識、宗教までを一つの論理で貫こうとする論考で、四章にわたり「行為的直観」「ポイエシス」「歴史的身体」といった独自の用語を重ねながら、粘り強く同じ主題を言い換えていく文体が特徴である。

あらすじ

現実の世界は物と物とが相働く世界であり、物が働くとは物が自己を否定することである。世界は多の一としても一の多としても考えられず、個物と個物とが互いに限定し合う「絶対矛盾的自己同一」の世界であると西田は説き起こす。第一章では、この世界を「作られたものから作るものへ」と動く創造的な世界とし、時もまた過去と未来とが現在において相互否定的に結びつく「非連続の連続」として成り立つと論じる。我々は手を持つがゆえに物を作るホモ・ファーベルであり、世界はポイエシス(制作)の世界である。主体が環境を、環境が主体を形成する生命の世界から、過去と未来が現在において同時に存在する歴史的世界へと議論は進む。第二章では、ライプニッツのモナドのように世界を映す無数の個物が表現作用的に自己を形成するとし、物を見ることと作ることとが一つである「行為的直観」によって、物を具体的に把握する道を示す。人間の身体は生物的身体ではなく歴史的身体であり、社会はポイエシスから始まると説かれる。第三章では、世界は我々を生むと同時に殺すものとして迫り、我々はそれと戦うことで生きるとし、種的生命、意識、概念的知識、形式論理の成り立ちを、行為的直観の立場から位置づけ直す。第四章では、直観的に与えられたものが論理的に我々を動かすことを論じ、歴史的に与えられたものが個人の生命の根底に迫ること、文化的過程が倫理的であることを述べたうえで、世界の自己同一は世界を越えた超越的なものにあるとして、親鸞の『歎異抄』や東洋の即心是仏に触れつつ宗教の立場に及ぶ。最後に、思惟や科学的知識を、矛盾的自己同一の世界を抽象的にとらえた一面と位置づけ、歴史的生命の自覚としての弁証法的論理を説き、歴史的生命は技術的であり、種的形成からイデヤ的形成へ発展すると結ぶ。

冒頭部(原文より)

 現実の世界とは物と物との相働く世界でなければならない。現実の形は物と物との相互関係と考えられる、相働くことによって出来た結果と考えられる。しかし物が働くということは、物が自己自身を否定することでなければならない、物というものがなくなって行くことでなければならない。物と物とが相働くことによって一つの世界を形成するということは、逆に物が一つの世界の部分と考えられることでなければならない。例えば、物が空間において相働くということは、物が空間的ということでなければならない。その極、物理的空間という如きものを考えれば、物力は空間的なるものの変化とも考えられる。しかし物が何処までも全体的一の部分として考えられるということは、働く物というものがなくなることであり、世界が静止的となることであり、現実というものがなくなることである。現実の世界は何処までも多の一でなければならない、個物と個物との相互限定の世界でなければならない。故に私は現実の世界は絶対矛盾的自己同一というのである。

「絶対矛盾的自己同一」西田幾多郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

 我々の生物的身体というものが歴史的生命として既に技術的である。アリストテレスのいう如く、身体的発展は自然のポイエシスである。しかし我々の社会的生命において、それが真に技術的となる。我々の身体は歴史的身体的と考えられる。かかる立場から、我々の歴史的生命は何処までも技術的といい得るであろう。しかしまた逆に歴史的生命が技術的ということは、矛盾的自己同一的に、何処までもイデヤ的形成的ということでなければならない。故に種的形成からイデヤ的形成に発展する。かかる意味においてのみ、特殊が即一般といい得るのである。

「絶対矛盾的自己同一」西田幾多郎(青空文庫)

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