円本とは
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- 読み
- えんぽん
1冊1円均一で文学全集などを予約販売する出版形態と、それが巻き起こした昭和初年の出版ブーム。大正15年(昭和元年、1926年)11月、改造社社長・山本実彦が『現代日本文学全集』の予約募集を始めたのが発端で、12月に配本された第1回の『尾崎紅葉集』を皮切りに、予約購読者は三十数万人という当時としては破格の数に達し、倒産寸前だった改造社の経営を立て直した。予約の締め切り日には、勤め帰りの人々が改造社の前に長い列をつくったと伝えられる。名称は同時期に大阪・東京で走った1円均一のタクシー「円タク」にちなむとされる。この成功に他社も相次いで追随し、新潮社の『世界文学全集』、春陽堂の『明治大正文学全集』、平凡社の『現代大衆文学全集』などが競って刊行された。昭和2年(1927年)には、円本に対抗するように、安価な古典の叢書として岩波文庫が創刊されている。作家たちは思いがけない多額の印税を得て、その収入で外遊する者も現れた。一方で、過剰な競争から出版社が売れ残りに苦しみ、のちには古書店や露店に円本があふれた。安価な全集の普及は、それまで一部の読者層に限られがちだった文学作品を広く一般家庭に届けることとなり、大衆文学をはじめとする読書文化の大衆化を後押しした。