大衆文学とは

分類
文芸思潮
読み
たいしゅうぶんがく

純文学に対して、広い読者層への娯楽性・通俗性を重視した大正末から昭和にかけての文学の総称。中里介山が大正2年(1913年)から「都新聞」で連載を始めた大長編『大菩薩峠』が先駆とされる。「大衆文芸」という呼び名は大正末に広まり、大正14年(1925年)には白井喬二の呼びかけで直木三十五・江戸川乱歩・国枝史郎らが「二十一日会」を結成し、翌大正15年(1926年)に雑誌「大衆文芸」を創刊して、この分野を一つの文学として打ち出した。講談の語りや立川文庫の読み物を土壌に、時代小説・捕物帳・探偵小説・伝奇小説・ユーモア小説など多彩なジャンルへ発展し、「キング」「講談倶楽部」「新青年」「苦楽」などの雑誌と新聞連載がその舞台となった。雑誌「新青年」では江戸川乱歩が『二銭銅貨』(大正12年)で本格探偵小説を確立し、夢野久作の幻想的な猟奇小説、小栗虫太郎の博識を凝らした本格推理『黒死館殺人事件』もここに連なる。吉川英治・山本周五郎・尾崎士郎らは新聞・雑誌小説として時代小説や人情小説を書き継ぎ、国民的な人気を博した。昭和2年(1927年)からは平凡社の『現代大衆文学全集』が円本として刊行され、昭和10年(1935年)には大衆文学の新進作家を対象とする直木賞も創設された。プロレタリア文学が政治的主題を、新感覚派が前衛的な表現技巧を追求したのに対し、大衆文学は娯楽性と物語の面白さを何より重んじ、戦後の中間小説や時代小説・推理小説の隆盛へと直接つながっていく。

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