春鳥集(蒲原有明)のあらすじ・登場人物
新しい詩形をうたう第三詩集
- 文字数
- 19,336字
- 読了目安
- 約39分
- 表記
- 旧字旧仮名
この作品について
蒲原有明の第三詩集。1905年(明治38)7月刊。前集『独絃哀歌』以後の約二年間の作を収め、「夏まつり」から「五月靄」までを含む。自序で詩形の研究と象徴の方法を論じ、芭蕉の句まで引いて新しい詩の言葉を宣言する。巻末の長篇「斧」は難解との批判を受け、そのためあらすじを添えた。
あらすじ
巻頭に「櫻をばなど寢處にはせぬぞ、花にねぬ春の鳥の心よ」という芭蕉の句を掲げる。自序は、自然と我の関係を豹の斑と瞳にたとえ、五官の感覚を交錯させて詩にすること、古い句の中にも散文詩に値するものがあることなどを述べ、晦渋との批判を甘んじて受けると宣言する。本文は「日のおちぼ」「遺曲」「繋縛」「秋」「宿命」「水盤に」「圓寂」などの短詩ののち、神話を題材にした長篇詩「斧」で終わる。「斧」では夫の伊佐奈が橘を斧で打とうとし、妻の止利の影が囁くうちに斧が下りて橘が根から倒れ、夫も息絶える。
冒頭部(原文より)
櫻をばなど寢處にはせぬぞ、 花にねぬ春の鳥の心よ。 花にねぬこれもたぐひか鼠の巣。 ばせを 自序 この集には前集『獨絃哀歌』に續ぎて、三十六年の夏より今年に至るまでの諸作を載せたり。 『夏まつり』は最も舊くして、『五月靄』は最近の作なり。
「春鳥集」蒲原有明(青空文庫)
末尾部(原文より)
ささやくと妻の止利は見て 默すとき、斧は下りぬ。 橘は根より僵れぬ。 あなや斧、あなや橘、 花もなく、つひに實もなし。―― 『あなや妻の止利』と言ひて、 夫の伊佐奈呼息たえ果てぬ。 (明治三十八年七月刊)
「春鳥集」蒲原有明(青空文庫)
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