小泉八雲の名文

小泉八雲の作品から、よく知られた一節を集めました。

4件

耳無芳一の話

ここに琵琶がある、だが、琵琶師と云っては――ただその耳が二つあるばかりだ!

全身に経文を書いた芳一の姿は亡霊には見えず、書き忘れた耳だけが闇に浮かぶ。迎えに来た平家の武者の亡霊が発するこの言葉が、怪談の山場となる。

雪女

しかし、もしあなたが今夜見た事を誰かに――あなたの母さんにでも――云ったら、私に分ります、そして私、あなたを殺します。

吹雪の小屋で巳之吉の命だけを助けた雪女が残していく言葉。この約束が破られる日まで、物語は静かに張りつめたまま続いていく。

貉

『へえ! その見せたものはこんなものだったか?』と蕎麦屋は自分の顔を撫でながら云った――それと共に、蕎麦売りの顔は卵のようになった……そして同時に灯火は消えてしまった。

物語の結び。のっぺらぼうから逃げてきた商人が、助けを求めた蕎麦屋にまで同じ顔を見せられる二段構えの落ち。短い怪談を一瞬の暗転で締めくくる。

ろくろ首

五百年ほど前に、九州菊池の侍臣に磯貝平太左衞門武連と云う人がいた。

小泉八雲『怪談』所収「ろくろ首」の書き出し。武勇の侍が主家を失い、のちに出家して回龍と名のるに至る物語の導入。

この作家について

小泉八雲