ろくろ首(小泉八雲)のあらすじ・登場人物
山中の一軒家に宿を借りる僧
- 怪奇
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 6,885字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 山梨県
この作品について
小泉八雲が1904年(明治37年)の怪談集『怪談(Kwaidan)』に収めた説話の一編(田部隆次訳)。もとは武士だった僧・回龍が、旅の途中で甲斐の山中の一軒家に宿を求める。その夜、家の者たちに奇妙な気配があることに、回龍は気づく。怪奇のうちにどこか飄々とした可笑しみを漂わせた、八雲が語り直す日本の怪異譚である。
あらすじ
五百年ほど前、九州菊池家に仕えた磯貝平太左衛門は、武勇にすぐれた武士だったが、主家の滅亡ののち世を捨てて僧となり、回龍と名のって諸国を行脚していた。ある日、甲斐の山中で日が暮れ、木こりに導かれて一軒家に泊めてもらった回龍は、夜半、ふと隣室をのぞいて驚く。眠っているはずの家の者たちの、胴から上――首がすっぽりと抜け落ちているのだ。彼らは首が自在に飛びまわる妖怪「ろくろ首」だった。回龍は首の抜けた主人の胴体を窓から外へ動かし、森で首々が自分を食おうと相談しているのを聞く。もとの体に戻れなくなった主人の首は、ほかの首を率いて回龍に襲いかかるが、彼は木を引き抜いて打ち払う。主人の首は回龍の衣の袖に噛みついたまま死に、離れなくなってしまった。のちに回龍は、その首を袖にぶらさげたまま旅を続ける。首を見た追剥ぎは人を脅すためにそれを買い取り、後に真相を知って恐れ、首を弔う――。怪異と諧謔とをないまぜにした、八雲の怪談の一編である。
登場人物
- 回龍(囘龍) もと九州菊池家の武士・磯貝平太左衛門。世を捨てて僧となり諸国を行脚する。剛胆でろくろ首を恐れず退治する
- ろくろ首 甲斐の山中の一軒家に住む、夜ごと首の抜け出す妖怪たち。回龍を食おうとたくらむ
- 追剥ぎ 回龍の袖に噛みついた首を奪うが、事の真相を知って恐れ入り、首を弔う
冒頭部(原文より)
五百年ほど前に、九州菊池の侍臣に磯貝平太左衞門武連と云う人がいた。この人は代々武勇にすぐれた祖先からの遺伝で、生れながら弓馬の道に精しく非凡の力量をもっていた。未だ子供の時から劒道、弓術、槍術では先生よりもすぐれて、大胆で熟練な勇士の腕前を充分にあらわしていた。その後、永享年間(西暦一四二九―一四四一)の乱に武功をあらわして、ほまれを授かった事たびたびであった。
「ろくろ首」小泉八雲(青空文庫)
末尾部(原文より)
こんなにして盗賊は首と、衣を手に入れてしばらく、お化の僧となって追剥ぎをして歩るいた。しかし諏訪の近傍へ来て、彼は首の本当の話を聞いた。それからろくろ首の亡霊の祟りが恐ろしくなって来た。そこでもとの場所へ、その首をかえして、体と一緒に葬ろうと決心した。彼は甲斐の山中の淋しい小屋へ行く道を見つけたが、そこには誰もいなかった。体も見つからなかった。そこで首だけを小屋のうしろの森に埋めた。それからこのろくろ首の亡霊のために施餓鬼を行った。そしてろくろ首の塚として知られている塚は今日もなお見られる。(とにかく、日本の作者はそう公言する)
「ろくろ首」小泉八雲(青空文庫)
名文
五百年ほど前に、九州菊池の侍臣に磯貝平太左衞門武連と云う人がいた。
小泉八雲『怪談』所収「ろくろ首」の書き出し。武勇の侍が主家を失い、のちに出家して回龍と名のるに至る物語の導入。
原文を読む
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