新美南吉の名文

新美南吉の作品から、よく知られた一節を集めました。

7件

ごん狐

これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。

村に伝わる昔話として語り起こす、誰もが知る童話の書き出し。いたずら狐ごんと兵十の切ない交流を導く。

「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」  ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。

撃たれたごんの傍らで、兵十がようやく気づく最後の場面。すれ違ったまま終わる悲しみが、この一言に集まる。

おぢいさんのランプ

「わしの、しょうばいのやめ方はこれだ」

電灯の時代の到来を悟った巳之助が、売り物のランプを池のほとりの木に吊してともし、石を投げて一つずつ割っていく場面の言葉。時代に取り残される者の潔い身の引き方として心に残る。

手袋を買いに

寒い冬が北方から、狐の親子の棲んでいる森へもやって来ました。

冬の訪れとともに始まる童話の書き出し。人間を恐れる母狐と、何も知らない子狐の一夜が、この一行から動き出す。

ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら

子狐が無事に手袋を買って帰った結び。人間を恐れ続けてきた母狐のつぶやきが、答えを出さないまま余韻を残す。

「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」と言って、濡れて牡丹色になった両手を母さん狐の前にさしだしました。

初めて雪に触れた子狐が母さん狐に訴える言葉。「ちんちんする」という幼い言い回しが冷たさを肌で伝え、わが子を案じる母の思いから物語が動き出す。

デンデンムシノ カナシミ

「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」  ソシテ、コノ デンデンムシハ モウ、ナゲクノヲ ヤメタノデ アリマス。

背中の殻に悲しみが詰まっていると嘆いたデンデンムシが、友だちを訪ね歩いた末に気づく結末。1998年の国際児童図書評議会(IBBY)世界大会の基調講演で、美智子皇后(当時)が紹介したことでも知られる。

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新美南吉