おぢいさんのランプ(新美南吉)のあらすじ・登場人物
古いランプから始まる昔話
- 心理
- 文字数
- 11,954字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 愛知県
この作品について
1942年(昭和17年)刊の、新美南吉が生前に編んだ唯一の童話集の表題作。かくれんぼの最中、東一君が倉から持ち出したのは、竹の台と細いガラスの筒がついた古いランプだった。それを見たおじいさんは、日露戦争のころの村に暮らす十三歳の少年、巳之助の話を始める。身寄りがなく、使い走りなどで暮らす巳之助は、自分の力で身を立てるきっかけを探していた。ある日、人力車を引く手伝いで初めて大野の町へ出かけ、村にはないランプの明るさに出会う。舞台となる岩滑新田や大野は、南吉の故郷・知多半島に実在する土地。夜の明かりや人々の仕事を通じ、道具が暮らしを変える時代を描いている。古い品を珍しがる子供と、それに思い出を持つ老人の距離から、一人の人間の歩みへと話が広がってゆく。
あらすじ
孫にせがまれて、おじいさんは自分の若い頃の話を語り出す。身寄りのない孤児だった巳之助は、人力車を引く仕事の折に町で初めてランプを見て、その明るさに強く心を打たれる。暗い村を照らしたいと願った巳之助は、わずかな元手でランプを仕入れ、村々を売り歩く商売を始める。文字も読めなかった彼は、商売に必要な知識を得ようと独学で読み書きを覚え、やがてランプ屋として成功し、店を構え、妻を娶って一人前の暮らしを築いた。ところが世の中は進み、村にもとうとう電気が引かれることになる。ランプが無用の物となり生計を奪われると知った巳之助は、はじめは激しく抗い、電灯を村に入れようとする区長を逆恨みして、その家に火を放とうとまでする。しかし、マッチが見つからずに持ってきた火打ち道具で火をつけようとするが、うまくいかない。古い道具への不満を口にしたことで、自分が古いものにしがみついていることに気づく。巳之助は、売り物のランプを池のほとりの木にすべて吊るして灯し、石を投げて一つずつ割りながら、古い商売にきっぱりと別れを告げる。そして本屋に商売替えをして、新しい時代を生きていくのだった。語り終えたおじいさんは、孫に、古いものが役に立たなくなったら、いさぎよく捨てて新しい道へ進むのがよいのだと語りかける。
登場人物
- 巳之助 身寄りのない孤児から、村にランプを広める商人として身を立てた男。電灯の時代の到来に直面する
- おじいさん 物語の語り手。孫に自らの若い日の巳之助としての来し方を語って聞かせる
冒頭部(原文より)
かくれんぼで、倉の隅にもぐりこんだ東一君がランプを持って出て来た。 それは珍らしい形のランプであった。八十糎ぐらいの太い竹の筒が台になっていて、その上にちょっぴり火のともる部分がくっついている、そしてほやは、細いガラスの筒であった。はじめて見るものにはランプとは思えないほどだった。
「おぢいさんのランプ」新美南吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
東一君は黙って、ながい間おじいさんの、小さいけれど意気のあらわれた顔をながめていた。やがて、いった。 「おじいさんはえらかったんだねえ」 そしてなつかしむように、かたわらの古いランプを見た。
「おぢいさんのランプ」新美南吉(青空文庫)
名文
「わしの、しょうばいのやめ方はこれだ」
電灯の時代の到来を悟った巳之助が、売り物のランプを池のほとりの木に吊してともし、石を投げて一つずつ割っていく場面の言葉。時代に取り残される者の潔い身の引き方として心に残る。
原文を読む
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