赤とんぼ(新美南吉)のあらすじ・登場人物
ひと夏の少女と赤とんぼ
- 心理
- 文字数
- 3,021字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
山里の別荘にひと夏だけやってきた少女と、垣根の竹にとまる一匹の赤とんぼ。新美南吉が、赤とんぼの目を通して、出会いと別れのひと夏を描いた童話。静かな余韻を残す一編である。
あらすじ
初夏の山里、赤とんぼはいつも休む垣根の竹の上にとまっていた。昨年の夏に別荘の主人が植えた朝顔の実が、また芽を出している。今は誰もいないので雨戸が淋しく閉まっているその家に、ある日三、四人の人がやってきた。赤いリボンの帽子をかぶったかわいいおじょうちゃんと、そのお母さん、荷物を持った書生さんである。赤とんぼは思いきっておじょうちゃんの帽子のリボンにとまってみた。捕まえられるかと身構えたが、おじょうちゃんは「まア、あたしの帽子に! うれしいわ!」と跳び上がって喜んだ。それからひと夏、赤とんぼはおじょうちゃんのそばで暮らす。「とんぼとんぼ 赤とんぼ すすきの中は あぶないよ」という歌をうたう声を聞き、肩にとまり、いたずら好きの書生さんに追いかけられたりもした。やがて夏が終わり、秋の気配が濃くなる。ある日、おじょうちゃんはこの別荘に初めて来たときと同じ赤いリボンの帽子をかぶり、きれいな服を着ていた。肩にとまった赤とんぼに、小さい細い声で泣くように言う。「あたしの赤とんぼ……かあいい赤とんぼ……あたし、東京へ帰るのよ、もうお別れよ」。皆が歩き出し、おじょうちゃんは何度もふりかえって「あたしの赤とんぼよ、さようなら——」と言った。やがて姿は見えなくなる。淋しい秋の夕方、赤とんぼは尾花の穂先にとまって、あのかわいいおじょうちゃんを思い出している。
登場人物
- 赤とんぼ 垣根の竹にとまる一匹
- おじょうちゃん ひと夏を別荘で過ごす少女
- 書生さん 荷物を運んできた青年
冒頭部(原文より)
赤とんぼは、三回ほど空をまわって、いつも休む一本の垣根の竹の上に、チョイととまりました。 山里の昼は静かです。 そして、初夏の山里は、真実に緑につつまれています。 赤とんぼは、クルリと眼玉を転じました。
「赤とんぼ」新美南吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
「あたしの赤とんぼよ、さようなら――」 かあいいおじょうちゃんは、なんべんもふりかえっていいました。 けど、とうとう、皆の姿は見えなくなってしまったのです。 もう、これからは、この家は空家になるのかな――赤とんぼは、しずかに首をかたむけました。 淋しい秋の夕方など、赤とんぼは、尾花の穂先にとまって、あのかあいいおじょうちゃんを思い出しています。
「赤とんぼ」新美南吉(青空文庫)
原文を読む
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