あさましきもの(太宰治)のあらすじ・登場人物
人の世のあさましさを並べるコント
- 風刺
- 心理
- 文字数
- 1,822字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
太宰治の初期のコント。枕草子めいた「あさましきもの」という古語を掲げ、酒をやめると誓いながら破ってしまう男など、人の世の弱さとあさましさを列記する。最後に、そう書く自分自身のあさましさへと筆を返す、自嘲に満ちた小品である。
あらすじ
「あさましきもの」——太宰は、枕草子めいた古語を掲げて、人の世の弱さとあさましさを、小さな話に列記していく。たばこ屋の愛くるしい娘のために禁酒を誓いながら、その翌々日にはもう酔って店先に立ってしまう男。そして——結婚詐欺に問われ、能面に似た検事の薄笑いに、五年の懲役よりもみじめな思いをした男。弱く、あさましい人の世の姿を、太宰は冷ややかに書き並べる。だが最後に、彼は筆を自分自身へと返す。「さて、そういう乃公自身は、どんなものであるか」。濁酒三合ほしさに、こんなコントを書いている自分こそ「破廉恥の市井売文の徒」であり、「あさまし」いのだ、と。「ひとりでは大家のような気で居れど、誰も大家と見ぬぞ悲しき。一笑」——自嘲に満ちた、太宰らしい小品である。
冒頭部(原文より)
賭弓に、わなな/\久しうありて、はづしたる矢の、もて離れてことかたへ行きたる。 こんな話を聞いた。 たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめようと決心した。娘は、男のその決意を聞き、「うれしい。」と呟いて、うつむいた。
「あさましきもの」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
弱く、あさましき人の世の姿を、冷く三つ列記したが、さて、そういう乃公自身は、どんなものであるか。(……)あさましとも、はずかしとも、ひとりでは大家のような気で居れど、誰も大家と見ぬぞ悲しき。一笑。
「あさましきもの」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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