失敗園(太宰治)のあらすじ・登場人物
庭の草木のぼやきを速記する
- 風刺
- 文字数
- 2,456字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
太宰治の掌編。わが家の六坪ほどの庭に妻が植えた作物や草花が、どれもうまく育たない恥ずかしさをぼやき合う声を、語り手が速記したという体裁で綴る。とうもろこしやへちま、薔薇などが人間くさい口調で身の上を語り、冒頭で語り手は、これは必ずしもフランスのルナールの真似でもないと断っている。
あらすじ
語り手の家の六坪ほどの庭には、妻が秩序もなく何でも植えたが、見たところすべて失敗の様子である。恥ずかしい身なりの植物たちが小声でささやく言葉を、語り手は速記する。とうもろこしは丈ばかり伸びて実をつけられず、トマトは下品な育ちだから放っておかれても実を結ぶと胸を張る。クルミの苗は大器晩成の自信を語り、ネムの苗はそれを不良少年かと警戒する。にんじんは一箇月伸びないやけくそを笑い、だいこんは石ころだらけの地盤でごぼうの振りをして諦める。棉の苗は、やがて座蒲団になると聞かされて自嘲し、へちまは、この不細工な棚を作ったとき主人と細君が夫婦喧嘩をしたことを語る。薔薇は庭の女王を自任しながら、主人に新芽を摘まれて咲き損ねたと嘆き、早く死にたいと言う。そこへ「竜の鬚」を名乗る細いねぎが割り込み、最後に花の咲かない矢車草が、「是生滅法。盛者必衰。いっそ、化けて出ようか知ら」とつぶやく。
冒頭部(原文より)
(わが陋屋には、六坪ほどの庭があるのだ。愚妻は、ここに、秩序も無く何やらかやら一ぱい植えたが、一見するに、すべて失敗の様子である。それら恥ずかしき身なりの植物たちが小声で囁き、私はそれを速記する。その声が、事実、聞えるのである。必ずしも、仏人ルナアル氏の真似でも無いのだ。では。) とうもろこしと、トマト。 「こんなに、丈ばかり大きくなって、私は、どんなに恥ずかしい事か。そろそろ、実をつけなければならないのだけれども、おなかに力が無いから、いきむ事が出来ないの。
「失敗園」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ねぎ、じゃないの。」 「見破られたか。面目ない。」 「何を言ってるの。ずいぶん細いねぎねえ。」 「ええ面目ない。地の利を得ないのじゃ。世が世なら、いや、敗軍の将、愚痴は申さぬ。我輩はこう寝るぞ。」 花の咲かぬ矢車草。 「是生滅法。盛者必衰。いっそ、化けて出ようか知ら。」
「失敗園」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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