いたずらっ子(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
小さな弓を持つ来訪者
- 風刺
- 翻訳
- 文字数
- 2,626字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1835年12月に発表した短い童話(原題 Den uartige Dreng)を、北欧文学者の矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『マッチ売りの少女 アンデルセン童話集Ⅲ』)。嵐の夜、やさしいおじいさんの詩人のもとに、ずぶぬれの男の子が助けを求めてくる。『おやゆび姫』と同じ時期に発表された小品で、わずか数ページの話ながら、語り手が読者に語りかける口調と、最後の一言まで、軽妙な皮肉が効いている。
あらすじ
ある晩、嵐の中で、おじいさんの詩人が暖炉のそばで焼きリンゴを焼いていると、戸の外から、ぬれて寒がる小さな子どもの声がする。詩人は戸を開け、まっぱだかの男の子を中に入れ、ひざに抱いて温め、甘いブドウ酒を飲ませてやる。元気になった男の子は、自分はキューピッドだと名乗り、ぬれた弓が壊れていないか試してみようと言って、詩人の心臓を射る。男の子は大声で笑って飛び出していき、詩人は床に倒れて涙を流す。詩人は子どもたちに、あんないたずらっ子には気をつけて、遊んではいけないと言って聞かせようと思う。語り手は聞き手に、キューピッドがだれの後も追い、年とったおばあさんでさえ射られたことがあると話し、これがすごいいたずらっ子だということを忘れないようにと結ぶ。
冒頭部(原文より)
むかしむかし、ひとりのおじいさんの詩人がいました。とてもやさしいおじいさんの詩人でした。 ある晩、おじいさんが、家の中にすわっていたときのことでした。表は、すさまじいあらしになりました。雨が、たきのように降ってきましたが、おじいさんの詩人は、部屋の中のだんろのそばで、気持よく暖まっていました。だんろでは、火が赤々と、燃えていました。リンゴが、ジュージュー、おいしそうに焼けていました。 「こんなあらしのとき、外にいるものはかわいそうだなあ。着物も、びしょぬれになってしまうだろうに」と、おじいさんの詩人は言いました。こんなに、心のやさしい人だったのです。
「いたずらっ子」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
劇場の大きなシャンデリアの中にすわりこんで、明るく燃えあがっていることもあります。そういうときには、人々は、あたりまえのランプだと思っています。ところが、あとになって、そうではなかったことに気がつくのです。そうかと思うと、お城の遊園地の、散歩道を歩きまわっていることもあるのです。いやいや、それどころか、あなたのおとうさんやおかあさんも、胸のまん中を、射られたことだってあるんですよ。おとうさんやおかあさんに、きいてごらんなさい。きっと、おもしろい話を聞かせてもらえますよ。 まったく、このキューピッドというのは、いたずらっ子です。こんな子にかまってはいけませんよ。この子ときたら、だれのあとをも追っているんですからね。なにしろ、年とったおばあさんでさえ、矢を射られたことがあるんですよ。もっとも、それは、ずっとむかしの話で、もう、すんでしまったことですがね。でもおばあさんは、そのことを、けっして忘れはしませんよ。 いやはや、しようのないキューピッドです! でも、あなたには、この子がわかりましたね。では、キューピッドが、すごいいたずらっ子だということを、忘れないでくださいよ。
「いたずらっ子」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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