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赤いくつ(アンデルセン)のあらすじ・登場人物

脱げない赤いくつが踊りだす

  • 幻想
  • 翻訳

アンデルセン 訳者 楠山正雄 

文字数
7,561字
読了目安
約15分
表記
新字新仮名

この作品について

一足の赤いくつに心を奪われた少女カレンが、やがて脱ぐことも止まることもできなくなり、踊りつづけたまま森をさまようアンデルセンの童話。楠山正雄訳。見栄と思い上がりをいましめる教訓譚でありながら、足首ごとくつを切り落としてもらうという苛烈な場面を含み、アンデルセン作品のなかでも異彩を放つ。のちの文学・映画・バレエに繰り返し引かれ、「赤い靴」の題で世界に知られる一篇である。

あらすじ

貧しい家に生まれ、夏ははだし、冬は木のくつで過ごしていた少女カレンは、母の葬式の日、靴屋のおかみさんが縫ってくれた赤い布のくつをはいて棺のあとを歩いた。それを見かけた年とった奥さまに引き取られ、きれいな着物を着せられて育つ。やがて堅信礼のとき、カレンは王女のはいていたものによく似た赤いくつを選んでしまい、教会の中でもそのくつのことばかり考えていた。ある日、赤ひげの老兵が「なんとよく踊れそうなくつだ」とくつの裏を叩いてから、くつはひとりでに踊りだす。舞踏会へ行こうとしても、奥さまの看病に戻ろうとしても、足は止まらない。夜も昼も、野を越え森を抜けて踊りつづけるカレンの前には白い衣の天使が現れ、思い上がった者への罰を告げる。ついに彼女は首斬り役人に頼んで、赤いくつごと両足を切り落としてもらい、木の足と松葉杖で暮らすようになる。それでも赤いくつは彼女の前で踊り、教会の入口をふさぐ。牧師の家で働き、心から悔い改めたカレンのもとへ、やがて日ざしとともに安らぎが訪れる。

登場人物

冒頭部(原文より)

あるところに、ちいさい女の子がいました。その子はとてもきれいなかわいらしい子でしたけれども、貧乏だったので、夏のうちははだしであるかなければならず、冬はあつぼったい木のくつをはきました。ですから、その女の子のかわいらしい足の甲は、すっかり赤くなって、いかにもいじらしく見えました。  村のなかほどに、年よりのくつ屋のおかみさんが住んでいました。そのおかみさんはせっせと赤いらしゃの古切れをぬって、ちいさなくつを、一足こしらえてくれていました。このくつはずいぶんかっこうのわるいものでしたが、心のこもった品で、その女の子にやることになっていました。その女の子の名はカレンといいました。

「赤いくつ」アンデルセン(青空文庫)

末尾部(原文より)

」といいました。 「これも神さまのお恵みでございます。」とカレンはいいました。  そこで、オルガンは、鳴りわたり、こどもたちの合唱の声は、やさしく、かわいらしくひびきました。うららかなお日さまの光が、窓からあたたかく流れこんで、カレンのすわっているお寺のいすを照らしました。けれどもカレンのこころはあんまりお日さまの光であふれて、たいらぎとよろこびであふれて、そのためはりさけてしまいました。カレンのたましいは、お日さまの光にのって、神さまの所へとんでいきました。そしてもうそこではたれもあの赤いくつのことをたずねるものはありませんでした。

「赤いくつ」アンデルセン(青空文庫)

名文

はて、ずいぶんきれいなダンスぐつですわい。踊るとき、ぴったりと足についていますように。

教会の戸口で赤ひげの老兵がカレンの靴の底をたたいて言う言葉。この祝福めいた一言から、止まらない踊りの呪いが始まる。

赤いくつをはいて、踊っておれ。お前が青じろくなって冷たくなるまで、お前のからだがしなびきって、骸骨になってしまうまで踊っておれ。

剣を持った天使がカレンに下す宣告。虚栄の罰としての踊りが、童話とは思えない凄みで語られる場面だ。

カレンのたましいは、お日さまの光にのって、神さまの所へとんでいきました。そしてもうそこではたれもあの赤いくつのことをたずねるものはありませんでした。

アンデルセン『赤いくつ』の結び。悔い改めたカレンが救われる最期を、光とオルガンの響きの中に静かに描く。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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